本研究は、縄文時代前期から後期における日本海沿岸地域を対象に縄文土器の系統やその変遷から、当該期の地域間交流の実態を明らかにすることを目指している。令和5年度は、北陸地方と北海道を対象とした研究を行った。 本年度に実施した主な調査研究は、以下の通りである。 1)石川県における縄文中期前葉土器群の資料調査:まず、能登地方において、縄文中期前葉土器群(新保・新崎式土器)がまとまって出土している石川県能登町真脇遺跡の出土資料(真脇遺跡縄文館所蔵)を実見した。その後、その他良好な資料が多く出土している鹿島町徳前C遺跡や異系統土器も出土している能美市宮竹庄が屋敷C遺跡の出土資料(石川県埋蔵文化財センター所蔵)などを実見した。型式学的な検討や出土状況の検証、異系統土器との関係から、北陸地方における縄文中期前葉の土器群(新保・新崎式土器)の編年に関する再検討を行った。 2)北海道稚内市における発掘調査参加および出土土器の調査研究:昨年度に引き続き、稚内市内における縄文遺跡の発掘調査に参加した。また、豊岩11遺跡の調査成果や豊岩5遺跡の再検討を行うことで、稚内市豊岩地区における縄文遺跡群に関する考察をまとめた。 以上に加え、昨年度実施した秋田県男鹿市出土の縄文中期遺物の資料調査、道央における縄文前期後葉~中期前葉土器の資料調査等により、日本海沿岸地域を対象とした縄文土器の系統やその変遷に関する考察を深めた。
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