研究課題/領域番号 |
22J11819
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小泉 慶洋 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート / 銅多核構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、分子状のアニオン性金属酸化物であるポリオキソメタレートを用いて、メタンをはじめとする低級アルカンの酸化反応に高活性を示す金属多核活性点構造を設計し、低級アルカンからアルコールへの高選択的な酸素酸化反応を実現することを目的とする。令和4年度では、生体内酵素や有機・固体触媒に関する既報と計算化学的な知見により、活性点構造として期待されている2価および1価の銅イオンからなる銅多核構造を設計した。空孔中央に反応性の高い酸素原子を多数有する環状ポリオキソメタレートを有機溶媒中で量論量の銅(II)イオンと反応させることで、空孔内部に4核、8核、12核、16核の銅多核構造を選択的に合成することに成功した。特に、4核、8核構造の合成では、溶媒にメタノールを添加し、銅(II)イオンが配位可能な酸素原子の一部をメトキシ基によって保護することで、銅(II)イオンの導入サイトを制御できた。12核、16核構造の合成では、銅(II)イオンの当量を制御することで、同一の環状ポリオキソメタレート骨格内部に異なる核数と配列、酸素架橋状態を有する銅多核構造を構築できた。また、反応条件を制御することで、これらの銅多核構造を段階的に合成・単離することができた。本研究ではさらに、先述した銅多核構造を有する環状ポリオキソメタレートを還元することで、銅原子間の結合を有する銅ナノクラスターを合成した。これらの銅ナノクラスターでは、2価の銅多核構造では生じない新たな触媒特性の発現が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、低級アルカンの酸素酸化反応に高活性を示す金属多核活性点構造として期待される4核以上の銅多核構造を複数合成することに成功した。これらの銅多核構造の合成に用いた鋳型は、空孔中央に反応性の高い酸素原子を多数有する環状ポリオキソメタレートであり、金属多核構造を内部に集積可能な鋳型として非常に優れていることに加え、メトキシ基保護により金属イオンの導入箇所も制御可能となった。本合成法は、銅イオン以外にも多様な金属種に適用可能であると考えられ、金属多核活性点構造を設計するための一つの指針を築けたといえる。また、これらの銅多核構造を還元することで得られた銅ナノクラスターは、銅酸化物とは異なる触媒作用が期待できる。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、低級アルカンの酸素酸化反応に有効な触媒を開発するために、種々の銅多核構造やそれを還元することで得られる銅ナノクラスターを環状ポリオキソメタレート内部に設計する。より具体的には、還元手法や添加剤等の検討により還元状態や構造の異なる銅ナノクラスターを合成する。合成した触媒は、単結晶X 線構造解析や元素分析、質量分析、各種分光分析等により構造を明らかにする。また、対カチオンを親フッ素性のカチオンに交換し、カチオン交換による構造の保持を確認する。得られた触媒はフルオラス溶媒に溶かし、フルオラス溶媒/水のバッチ二相系で低級アルカンの酸素酸化反応の活性評価を行う。活性が低い触媒に関しては、各種分析や量子化学計算に基づいてその原因を追究し、適切な活性点構造の構築に向けてフィードバックする。合成した銅多核構造の触媒としての応用可能性を拡張すべく、当初予定していた酸化反応だけでなく、還元反応も検討する。
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