研究実績の概要 |
本研究では、従来住宅規模の木造建築物では軽視もしくは考慮されていなかった配管やコンセントボックスのために設ける小開口が面材張り耐力壁のせん断性能に与える影響について実験や解析を通して検討を重ねた。得た知見は以下の通りである。住宅規模の壁倍率の低い壁や、補強を要さない開口径の小さな小開口(108mm,144mm)では小開口によるせん断性能の低下は確認されなかった。一方で、中大規模木造建築物に用いられるような高剛性・高耐力の耐力壁は小開口によりせん断性能が低下した。合板のせん断破壊が最大耐力低下の主要因であり、合板残幅がせん断力を負担していることを確認した。合板のせん断破壊後の挙動は、12mm厚合板仕様では破壊後に荷重が低下するが、24mm厚合板では破壊後も荷重は低下せず横ばいとなった。また開口位置や補強方法によるせん断性能の差はほぼ確認されず、24mm厚合板では開口径が合板の半分以下であれば面外座屈は考慮しなくて良い。 計算により簡便に小開口付き面材張り耐力壁のせん断性能を推定出来る手法の提案を行った。合板のせん断強度と合板残幅から算出可能である合板のせん断耐力と無開口仕様の最大耐力を比較することで、合板のせん断破壊の発生の有無が判別可能である。合板がせん断破壊する場合は、本章で提案した手法により実験を要さず小開口付き合板張り耐力壁のせん断性能が推定可能である。本章で提案した手法による推定性能は概ね安全側の評価となることが確認された。一方で、一部の仕様では過剰に低減する場合もあり更なる検討が必要である。
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