最終年度は、「野生植物ー訪花昆虫ーソバ」の関係性について、畦畔草地とソバ畑での野外観察とDNAメタバーコーディングによる調査を実施した。 畦畔草地の野生植物は、ソバの訪花昆虫との栄養(採餌)・非栄養(夜間の休息)的な相互作用を介して、間接的にソバの送粉サービスへ影響していることが明らかになった。さらにこの2つの相互作用タイプの間接効果の比率(栄養/非栄養)が中程度の時に送粉サービスが最も高くなり、両相互作用が相補的に送粉サービスへ貢献していることが明らかになった。DNAメタバーコーディングでは、草地やソバ畑で採集した個体にも高頻度で樹木(クリなど)の花粉も付着していることがわかった。これはソバ畑に集合してきた個体がより広範囲を点々と移動していることを示唆している。 研究期間全体を通して、次の3点を明らかにした。①ソバ開花前の約1ヶ月は畦畔草地の草刈りを控えることで、ソバの訪花昆虫が増え、結実率が2割から3割向上する。②この畦畔草地の管理の効果は、畦畔の野生植物をソバの訪花昆虫が、餌資源(花粉や花蜜)と夜間の休息場所(植物の物理構造)として利用していることで発揮される。③ソバの訪花昆虫は、ソバ・草原性の野生植物・樹木の花資源を1個体が景観スケールで移動しながら利用している。 ①と②から、ソバ畑の局所スケールでの畦畔管理によって、ソバ畑へ訪花昆虫が集合・居着きやすくなる行動応答を介して、送粉サービスを向上できることをメカニズムベースで解明した。この成果は従来餌資源としてのみ考えられてきた植物の役割に加え、棲み場所としての植物の役割も重要であり、送粉サービス維持にはより多様な野生植物が必要であることを示唆している。③からは、農地ー草地ー林の関連性が1個体レベルで生じており、草地だけでなく林も含めた景観スケールでの管理を特定する重要性が示唆された。
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