研究課題
これまでスロー地震の研究は日本やアメリカ西海岸といった密な観測網が整備された地域で特に精力的に行われており、その他の地域では必ずしも網羅的もしくは長期的な解析は行われていない。本研究では、観測点分布がまばらな観測網しかない地域にも適用可能な、単一観測点の地震計データからスロー地震を検出する手法の開発を行った。スロー地震を検出する際、従来は用いる周波数帯域を高周波数帯域(1-10 Hz)か低周波数帯域(0.01-0.1 Hz)に限定し、それぞれの周波数帯域で確認されるシグナルを1つのイベントとして検出していた。本研究ではこれらの2つの周波数帯域の情報を使い、地震波エネルギーレートと地震モーメントレートという現象の規模を表す物理量に変換した上で、2つの帯域で相関をとることで広帯域なシグナルとしてスロー地震を検出する。令和4年度はこの手法を日本及びメキシコのデータに適用し、手法の性能評価およびこれまで知られていなかったスロー地震活動の検出に成功した。令和5年度はさらに世界中のデータに適用し、アメリカ西海岸南部での検出に成功した。この地域ではこれまで低周波数帯域でのスロー地震のシグナルは検出されておらず、広帯域な現象としての地震性スロー地震という考え方の普遍性を支持する結果である。一方、日本とメキシコのデータで確認できなかった種類の誤検出も得られたことから、手法に改善の余地があることも確認できた。これらの研究成果について国内学会と国際研究集会、国際学会で発表を行った。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 128 ページ: e2023JB027311
10.1029/2023JB027311