惑星形成の初期段階であるダストアグリゲイトの衝突過程は数値計算によって調べられている。しかし数値計算で用いられている粒子間相互作用モデルであるJKRモデルには、分子運動に起因する粘性効果が考慮されていない。そこで本研究は分子動力学シミュレーション(MD計算)によって、JKRモデルとの差異を明らかにして、現実的な相互作用モデルの構築を行った。 本研究は、サブミクロンサイズの2球の球粒子を用意した。そして、法線方向の力を明らかにするため正面衝突のMD計算を、粒子の自転に起因する抵抗トルクを明らかにするために回転運動のMD計算をそれぞれ行った。 まず正面衝突のMD計算では、2粒子の加速度から力を解析した。その結果、2粒子が近づく時と離れる時に力が異なることが分かった。これはヒステリシスと呼ばれる現象であり、散逸が生じている証拠である。また反発係数に注目するとJKRモデルよりも低い値が得られた。これらは散逸の存在を示しており、特に衝突速度が大きく、半径が小さい時に散逸が強くなることが分かった。我々は圧力と散逸に関係があると考え、圧力依存の散逸力を導入し、MD計算結果の再現に成功した。 次に、回転運動に関するMD計算では、接触している2粒子に互いに逆の自転角速度を与え、その角速度時間進化を調べた。角速度時間進化はトルクに比例する物理量であり、モデルとの比較によって抵抗トルクでは説明できない散逸的な振る舞いがみられた。我々はこの散逸的なトルクと粒子の角速度に比例した散逸トルクを比較して一致することから、新しい散逸トルクモデルを提案した。ただし、散逸トルクの係数に関しては、粒子の結晶方向の依存性が強いことも我々は明らかにしており、モデル化の際に注意しなければならない。
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