アジリジン環形成酵素を含有した生合成遺伝子クラスターの活性化、および複数の最終産物様化合物の特定に成功した。通常、真菌や細菌において観測される一つの遺伝子クラスターは、一つの化合物もしくはいくつかの類縁体の生合成を担う。一方で、本研究で対象とした生合成遺伝子クラスターは、決定された化合物の構造から複数の化合物群をを生成することが分かった。このような遺伝子クラスターは、一部の真菌や真正細菌において報告があるものの、極めて稀である。 当該絡合クラスターは少なくとも三種類の化合物群(A~C)を生産することが確認されている。そのうち二つの化合物群AおよびBについて、非タンパク質構成アミノ酸であるdiaminopropionateを同一中間体として生産されることが考えられた。また、化合物群Cについては構造および遺伝子群の解析から、ピロールアミド化合物群に分類されることが分かった。そのうちピロール環の生合成酵素について、既報の推定機能とは異なる機能を、破壊株の蓄積物およびin vitro酵素反応実験から見出している。 当初対象としていた、アジリジン環形成酵素の機能解析については、遺伝子破壊株が蓄積する化合物が存在しなかったため、難航した。これまでに、二つのアジリジン環形成酵素は、共精製されるされることや、ヘテロダイマーの構造は既知アジリジン環形成酵素AziU2/U3と比較的類似していることをAlphaFold2の予測構造から見出している。機能については特定できなかったが、今後さらに探求する予定である。 このほかにも複数の、機能未知タンパク質が対象遺伝子クラスターには存在しており、本研究ではそれらを研究する上での実験系の確立に成功した。
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