本研究は、試験管内で翻訳導入可能な非天然アミノ酸種を拡充するため、翻訳伸長因子Pを人工進化することを目標としている。天然の翻訳伸長因子Pは、細菌中でプロリン連続配列の翻訳導入を促進する働きを持つが、再構成試験管内翻訳系においても一部の非天然アミノ酸の翻訳導入を促進あるいは抑制することが知られている。そこで、導入する非天然アミノ酸種に応じて翻訳伸長因子Pを最適化することで、導入可能な非天然アミノ酸種を拡充できると期待される。翻訳伸長因子Pは188残基のアミノ酸から構成されるタンパク質であるが、その中で最も翻訳反応に影響を及ぼすと考えられている、34残基目のアミノ酸に様々な変異を加えることとした。 昨年度は、天然アミノ酸のみで構成された翻訳伸長因子P変異体をモデルタンパク質として、発現系の構築に取り組んだ。発現系には、翻訳伸長因子P変異体ライブラリ構築に有利である大腸菌由来の試験管内翻訳系を採用し、各翻訳因子や核酸の濃度等を最適化することで、翻訳伸長因子Pを得ることに成功した。発現した翻訳伸長因子Pの濃縮・精製方法や活性評価方法の検討も行った。 本年度は、昨年度に構築した発現精製系をさらに改良して、非天然アミノ酸を導入可能となるようにコドンの割り当てを行った翻訳系を構築した。実際にこの翻訳系を用いてLysや非天然アミノ酸であるAcKなどを含んだいくつかの翻訳伸長因子Pの発現精製と活性評価をすることに成功した。
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