本研究の目的は、資金と情報が限られた状況でも実践可能な、外来ネズミ類の存在下でのノネコ管理体系の確立である。研究対象地はオオミズナギドリの最大規模の繁殖地である御蔵島であり、ノネコの集中的な個体数管理(捕獲・譲渡)が2021年と2022年に行われた。最終年度は、ノネコ・外来ネズミ類(ドブネズミとクマネズミ)・オオミズナギドリの野外データの収集と、過去のデータも用いた群集動態の解析を行なった。ノネコにおいては、自動撮影カメラの撮影データからSECRモデル(空間明示捕獲再捕獲モデル)を用いて、個体数や密度の空間勾配の年変動を推定した。そして、オオミズナギドリの繁殖状況調査やネズミ類の捕獲調査(捕獲除去・標識再捕獲)のデータを用いて、ノネコの2年間の集中捕獲が外来ネズミ類とオオミズナギドリに与える影響を検証した。 その結果、集中捕獲後にノネコが減少した調査サイトほど、オオミズナギドリのヒナ生存率が増加する傾向が確認された。また,島全体レベルでのヒナ生存率も、ノネコの集中捕獲以降,増加傾向にあることが確認された。一方で、ノネコの密度変化とネズミ類のCPUEとの間に相関はほどんど見られなかった。標識再捕獲調査では,ドブネズミの推定個体数がノネコの集中捕獲前よりも低下している傾向にあった.これらの結果は、今後さらにノネコを低密度化させても、外来ネズミ類増加によるオオミズナギドリへの影響悪化(メソプレデター・リリース)は生じず、オオミズナギドリの繁殖成功は改善されていく可能性を示している。
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