研究課題/領域番号 |
22J12765
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川(飯尾) 亜樹 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 腎障害 / 血液凝固系 / タコ足細胞 |
研究実績の概要 |
腎障害における凝固亢進の重要性を検証するため、まずは使用するモデルマウスにおいて凝固亢進がみられるか否かを確認した。LPS腎症での凝固因子Xa活性を評価するために、LPS投与1, 3, 24時間後のクエン酸化血漿中Xa活性を測定したところ、野生型およびPAR-2 KOマウスの両者で1時間後をピークに亢進し、3時間後には投与前程度に低下することを確認した。 PAR-2活性化がタコ足細胞の障害を誘導するという仮説を検証するため、野生型およびPAR-2 KOマウスより糸球体を単離し、LPS腎症惹起時の遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に評価した。比較対照としては溶媒投与群を用いた。その結果、LPS投与によって野生型とPAR-2 KOの両者において炎症やバクテリアに対する反応に関係する遺伝子群の発現が上昇した。その一方で、PAR-2KO糸球体においては、炎症に関する遺伝子群の発現上昇が野生型と比べて軽度であることが明らかとなった。本結果より、糸球体においてもPAR-2が炎症の増強に関与することが示された。さらに、野生型と比較してPAR-2 KO糸球体ではMitotic spindleやChromosome segregationなど、有糸分裂に関係する遺伝子群の発現が高いことが明らかとなった。タコ足細胞初代培養細胞でのin vitro実験も実施したが、糸球体wholeでの解析結果と一致していた。さらに、in vitroでの実験結果より、細胞周期停止遺伝子であるp21の発現が野生型と比較してPAR-2 KOタコ足細胞では低いことが明らかとなった。p21の発現は野生型でもPAR-2 KOでもLPS投与によって上昇しており、PAR-2存在下では発現が増強するものと考えられた。p21発現上昇は細胞老化も示唆し、炎症がタコ足細胞の老化を惹起し、PAR-2存在下ではさらに増悪する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型および全身性PAR-2 KOマウスでの検討が進んでいる。タコ足細胞におけるPAR-2の重要性を検証するため、PAR-2 floxマウスを樹立しタコ足細胞特異的Cre発現マウス(Nphs2-Cre)を6代に渡って交配中である。TFPI floxマウスについては複数回の試行を経てもloxPサイトの完全なノックインが遂行できず、TFPI遺伝子特異的な環境の存在が示唆されている。TFPIについてはノックアウト困難と考え、研究計画にも示しているようなrTFPIの添加実験に限定して行う。一部の計画変更は生じたが、タコ足細胞初代培養を用いた実験系も確立されており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
タコ足細胞におけるPAR-2の重要性を検証するため、PAR-2 floxマウスを樹立しタコ足細胞特異的Cre発現マウス(Nphs2-Cre)を6代に渡って交配中である。タコ足細胞特異的なPAR-2欠損が確認出来次第、野生型および全身性PAR-2 KOマウスでの腎障害の程度について評価を実施する。また、TFPI floxマウスについては複数回の試行を経てもloxPサイトの完全なノックインが遂行できず、TFPI遺伝子特異的な環境の存在が示唆されている。TFPIについてはノックアウト困難と考え、研究計画にも示しているようなrTFPIの添加実験に限定して行う。 さらに、TFPIの重要性を検討するために、同じく内因性凝固因子阻害因子であるアンチトロンビンIIIについても評価を行う。
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