研究課題
①TEMPO酸化セルロースナノファイバー (CNF) 表面のカルボキシレート基の対イオンを、1価のナトリウムイオン (Na) から4価のジルコニウム (Zr) イオンと交換し、CNFのみからなる板材の耐水性を向上させることを試みた。Na型では2000% w/w以上吸水した一方で、Zr型のCNF板材の平衡吸水率は約30% w/wであり、吸水率を劇的に低減させることに成功した。加えて、メチルトリメトキシシランを用いて、Zr型CNF 板材の表面を疎水化すると、表面は撥水性を示し、平衡吸水率はさらに低下した。以上より、対イオン交換・構造体表面の疎水化により、CNF材料の吸水率を劇的に低減できると実証した。②CNFのカルボキシ基の対イオンとして、イオン液体 (IL) のカチオンであるテトラオクチルアンモニウム (N8888) あるいはテトラオクチルホスホニウム (P8888) を導入することで、熱成形性の付与を試みた。IL型CNF (CNF-IL) のシートに対し動的粘弾性測定を行うと、昇温に伴い貯蔵弾性率 (E’) が大きく減少し、ILカチオンの導入によりCNFを熱軟化させることに成功した。また、CNF-IL間で比較すると、中心元素が大きい、P8888型CNFのE’の方が減少した。CNF-ILシートのイオン伝導率を測定すると、いずれのシートも昇温と共にイオン伝導率が上昇した。また、N8888型と比べ、P8888型CNFシートのイオン伝導率が高く、よりCNFカルボキシ基からの拘束力が小さいことがわかった。このことから、CNFの貯蔵弾性率を低下させるには、CNFからのイオン拘束性の弱いカチオンを導入することが効果的であると示唆された。P8888型CNFシートを熱圧成形することで、凹凸構造を有する厚材が形成でき、ILカチオンの導入によりCNFの熱成形が可能となることを実証した。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (4件)
Journal of Fiber Science and Technology
巻: 79 ページ: 156~164
10.2115/fiberst.2023-0020