恒星大気の統一的理解のためには、太陽物理学の枠組みを超えた幅広い恒星環境下における調査が不可欠である。本研究では様々な金属量を持つ恒星でのコロナ加熱について磁気流体数値計算を行い、金属量がコロナの物理量を制御する重要なパラメータであるという結果を得た。特に、金属量が小さいと大気の輻射冷却効率が落ちるためにより高温・高密度のコロナが形成され、密度の増加に伴ってコロナからの紫外線・X線光度は増加するという傾向が得られた。さらに金属量・元素組成の異なる恒星コロナに対して適用できるコロナループの物理量関係式を解析的に導出し、それが数値計算結果とよく一致することを確かめた。このスケーリング関係式は将来得られるであろう様々な恒星観測結果を予言するものでもあり、今後は観測との直接比較・検証を通して恒星大気の物理状態を系統的に理解することを目指す。また、今年度は若い星で発生するフレアに伴うX線放射モデリングを行なった。太陽・恒星フレア理論や観測データを整理し、それらと整合的なX線ライトカーブやスペクトル生成ツールを構築した。このモデルを用いて若い星周囲に存在する原始惑星系円盤の輻射輸送計算を実施し、中心星フレアからのX線による円盤の電離率変化を調べた。計算の結果、これまでの研究では見落とされていた硬X線が円盤ガスの電離に大きく寄与することがわかり、フレアが円盤進化に対して重要な役割を担うことを示唆する結果が得られた。
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