インフレーション仮説の検証に向けた広帯域偏光変調器の開発において、超短パルスレーザー加工を用いて作製されたモスアイ構造を波長板に施し、広帯域で機能する波長板を開発した。本年度は広帯域波長板として異なる2つの設計に対して感度の見積りを行った結果をまとめ、国際学会Low Temperature Detectorへ発表した。同時にその結果をJournal of Low Temperature Physicsへと投稿した。また、インフレーション検証を目指した衛星計画LiteBIRDの全体Face to face meetingへと参加し、現行する偏光変調器開発の全体進捗をポスターにまとめて共有した。その上で、波長板だけでなく波長板を回転させるための回転機構の低温試験もリードし、偏光変調器開発チームの中心を担った。実際の回転機構の冷却試験では、目的の周波数を十分な時間で維持できることを確認した。 本研究において超短パルスレーザー加工を用いたモスアイ構造の作製手法の開発により、世界最高帯域での観測を要求するLiteBIRD低周波望遠鏡でも十分に機能するほど広帯域な半波長板の開発に成功しただけでなく、その波長板を実際の望遠鏡に施した場合の感度の見積もりがideal case(反射や吸収による効率の低下がない場合)と十分に差異がないことを示した。また、得られた感度をインプットとして前景放射の効果も含めたテンソル・スカラー比の見積もりも統計的にideal caseと十分に差異がないことも示した。現在は系統誤差を含めた波長板の作製・評価、そして実機サイズを実際に加工するべく調整を進めている。
|