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2022 年度 実績報告書

低pH代謝適応に着目したがん悪性化機構の解明と新規治療戦略の創出

研究課題

研究課題/領域番号 22J13979
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

前田 啓介  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード腫瘍微小環境 / オミクス解析 / 腫瘍抑制因子 / がん代謝 / オルガネラ
研究実績の概要

本研究では、独自に確立した低pH培養実験系を応用し、マルチオミクスデータから細胞外低pH環境ががん細胞にもたらす表現型とそのメカニズムについて探索した。
ゲノム上のおよそ20,000遺伝子を標的とするCRISPERライブラリーを発現させた膵がん細胞プールを低pH環境下で長期間培養し、残存するgRNAの検出を行うことで低pH環境下で生存に必須な因子の同定を試みた。この低pH特異的な腫瘍抑制候補因子の過剰発現および欠失細胞を作製し、in vitroおよびin vivoレベルで低pH環境下でがん悪性化に寄与することを明らかにした。さらに、この詳細なメカニズムとして細胞死および宿主免疫細胞のリクルートへの関与を示唆するデータが得られている。
また、低pH環境に暴露したがん細胞をCE-TOFMSによるメタボローム解析に供し、低pH環境下で特異的に亢進する代謝経路と蓄積する下流代謝物を同定した。こちらもin vitroおよびin vivoレベルでがん悪性化への関与を明らかにし、代謝物の腫瘍微小環境における役割を解明した。
さらに、低pH環境下における細胞死耐性獲得、転移・浸潤能の亢進といった表現型とオルガネラ構造の変化が関与する可能性を見出している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概ね予定通り進行している。低pH特異的腫瘍抑制因子の機能解析を継続中である。腫瘍由来のトランスクリプトーム解析データをもとに、細胞死が腫瘍形成抑制に関与している可能性を見出したほか、下流で転写制御を受ける因子Aが腫瘍微小環境中の免疫細胞のポピュレーション制御に関与している可能性を見出している。低pH特異的な亢進代謝経路に着目した悪性化メカニズムについては、因子Bの過剰発現細胞ではin vivoにてコントロールと比較して有意な腫瘍形成速度の増加を確認できた。悪性化メカニズムについても明らかにすることができており、現在論文投稿中である。研究を進める中で、超解像共焦点顕微鏡を用いた解析により、低pH環境下におけるオルガネラ動態が大きく変化することを発見し、これに直接的に関与する因子Cと因子Dを発見した。現在がんの転移・浸潤といった悪性化メカニズムとの関連を検討中である。

今後の研究の推進方策

本年度に得られた結果をまとめ,学術誌に投稿する。
特に低pH特異的腫瘍抑制因子の下流因子Aについては、マウスゼノグラフト実験にて過剰発現細胞の腫瘍形成が顕著に促進されたことから、悪性化に直接的に関与していることが考えられるが未だ先行報告がないため、微小環境中における役割をより詳細に明らかにする。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Cancer metabolism within tumor microenvironments2023

    • 著者名/発表者名
      Aki Sho、Nakahara Ryuichi、Maeda Keisuke、Osawa Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects

      巻: 1867 ページ: 130330~130330

    • DOI

      10.1016/j.bbagen.2023.130330

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Metabolic adaptations of cancer in extreme tumor microenvironments2023

    • 著者名/発表者名
      Nakahara Ryuichi、Maeda Keisuke、Aki Sho、Osawa Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 114 ページ: 1200~1207

    • DOI

      10.1111/cas.15722

  • [学会発表] Development of novel cancer treatment targeting acidic pH responsive mitochondrial dynamics)2022

    • 著者名/発表者名
      前田啓介, 安藝翔, 菅谷麻希, 西田美由紀, 土田里香, 関元昭, 大澤毅
    • 学会等名
      第21回東京大学生命科学シンポジウム
  • [学会発表] 低pH腫瘍微小環境におけるがん抑制因子の同定2022

    • 著者名/発表者名
      前田啓介, 安藝翔, 土田里香, 関元昭, 大澤毅
    • 学会等名
      第4回がんと代謝研究会・若手の会
  • [学会発表] 低pHミトコンドリアダイナミクスを標的とした新規がん治療法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      前田啓介, 安藝翔, 土田里香, 関元昭, 大澤毅
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会

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公開日: 2023-12-25  

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