私たちの生体内では、生体物質が水に溶解することによる浸透圧が各所で作用している。したがって、医用材料としてバイオマテリアルを生体内で安全かつ効率的に応用するためには、材料の浸透圧の法則を理解し、制御することが必須となる。 本研究では、人工硝子体や人工靭帯への医療応用が研究されている高分子ゲル材料において、網目構造が精密に制御された高分子ゲルを用いて浸透圧を系統的に測定することで、これまで約50年間にわたって用いられてきた従来の定説を覆し、高分子ゲルの浸透圧が準希薄領域のスケーリング則に支配されるという基本法則を発見した。さらに、高分子ゲルの浸透圧を支配するスケーリング則が物理学における臨界指数と結びついていることを実証し、高分子ゲルの浸透圧の基本法則としての普遍性を明らかにした。この研究成果により、生体内での高分子ゲルの自発的な体積膨潤を精密に予測することが可能となり、浸透圧が定量的に制御された高分子ゲル材料の設計開発が可能となった。上記の研究成果は、材料工学および物理学において重要な知見であり、この成果は原著論文として学術雑誌に掲載された。 さらに本研究では、星型高分子溶液およびスライムの浸透圧を系統的に測定し、星型高分子溶液の浸透圧が直鎖高分子溶液の普遍的状態方程式で記述できること、および、スライムの浸透圧が準希薄スケーリングに常に支配されることを明らかにし、これらの物質の浸透圧を統一的に理解する普遍的物理法則を明らかにした。
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