研究課題/領域番号 |
22J14326
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 奈緒 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 学習方略 / 縦断調査 / 方略指導 / 実践研究 / 英語学習 / 語彙学習 |
研究実績の概要 |
中学生,高校生が英語の語彙学習の方法(語彙学習方略)をどのように変化させるのかについて検討するため,①中学生,高校生を対象とした縦断的な調査研究,および②高校生の効果的な語彙学習方略を指導する実践研究,に従事した。 ① 中学生,高校生の用いる語彙学習方略の変化とその要因について検討を行うため,質問紙調査を実施した。中学校,高校各3校において,2021年度中学1年生,高校1年生であった生徒を対象に調査を開始しており,今年度は2年目の調査を実施した。質問紙調査項目は,語彙学習方略,語彙学習に対する信念,目標(内田, 2021)であり,合わせて語彙知識の多さを測定する語彙サイズテスト(相澤・望月,2010)も実施した。質問紙のデータ入力,語彙サイズテストの採点およびデータ入力を終えており,これから1-2年目の変化および要因の関連について,交差遅延モデルを用いた分析を実施する。なお,語彙サイズテストの結果について各学校の教員に返却した。 ② 効果的な語彙学習方略の学校現場における指導の効果と,学習方略を取り入れるプロセスについて検討した。県立高校の1クラスにおいて,英語教師と連携し,高校1年生時点から学習方略について指導を行っており,今年度は実践の3年目であった。3年間の調査の結果,学習方略を明示的に教えた後,普段の授業でその方略を日常的に意識させたり使わせたりする機会を取り入れることで,効果的な学習方略の使用が長期的に増えていたことが明らかになった。ただし,受験などの負担にさらされると,一部の生徒は丸暗記的な学習に頼ってしまう様子も確認されたため,新たに学習方略を振り返る指導を作成,実施した。生徒の卒業前に12名を対象にインタビューを実施しており,指導を受けた生徒の学習方略の変化の個人差の要因についてさらに検討を行う。なお,この研究の1年目の成果について論文掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の研究①について,生徒が語彙学習方略をどのように変化させるのか,学習観や目標,語彙知識とどう関連するのかを検討することを目的に,昨年度から同様の中学・高校各3校において引き続き縦断調査を実施することができた。想定以上に時間は要したものの各学校へのテスト結果のフィードバックや分析の下準備も終え,次年度に向けた準備は終えることはできたと考えている。 また,上述の研究②について,学習方略の指導研究において長期的な調査の不足が指摘される中,3年間の生徒の学習方略の変遷を追うことができた。その中で,浅い学習と深い学習の間での揺らぎが観測され,学習方略をどのように変化させるのかという本研究全体の目的に対しても,想定以上の視点を得ることができた。学習方略の獲得の促進に向けて,実践的にも研究的にも意義のある知見を得られたと考えている。対象の生徒の卒業前に追加のインタビューデータを得ることができたため,生徒の方略使用の変化のプロセスについてさらなる示唆を得ることもできる。今年度,本研究の実践1年目となる2020年度の成果について,論文の掲載も決定した。
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今後の研究の推進方策 |
【研究の遂行】1. 上述の研究①に関連して,同様の中学・高校各3校に調査協力を依頼し,縦断調査の3回目を実施する。調査実施準備と並行して,すでに得ている2年目までのデータを用いて,生徒の学習方略の変化や信念,目標の変化について検討を行う。3回目の調査を実施し次第,テスト採点およびデータ入力を行い,3年目のデータを加えた分析を実施する。2. 上述の研究②と関連して,方略指導を受けた生徒の方略使用の変化のプロセスについて検討するため,卒業前に得たインタビューデータの分析を行う。質問紙調査結果および3年目に追加で行った指導時のワークシートを合わせて検討を行う。
【研究の発信】2022年度に実施した研究①は国内学会,研究②は国際学会EAPRILにおいて発表を行う。また,研究②の成果をもとに論文を執筆し,国内学術誌に投稿する。
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