英語学習において,学習者は多量の語彙を自立的に学ぶ必要があり,その質として学習方略が重要である。学習初期には,反復練習に頼っても成果が得られやすくとも,既有知識や学習する語彙量が増えるにつれ,知識を結びつける学習方略を使用することで適応的に学習できると考えられる。そこで,本研究課題では,学習方略の変容過程に焦点を当て,(1)中高生を対象とした調査研究と,(2)高校において学習方略を指導する実践研究を行った。これらの研究を通して,適応的な方略使用に至る学習者内の変化について一定の示唆が得られつつある。 (1)2021年度から実施している縦断調査の3年目として,本年度は,中学校2校および高校3校において,語彙学習方略,学習観,学習目標を問う質問紙調査と語彙知識量を推定するテストを実施した。調査協力校に対して,語彙知識量の推定結果を返却した。これらの調査結果をデータ化を終え,現在分析中である。 (2)-1. 2020年から2022年度にかけて高校教員と協同し,知識を関連づけて語彙を学ぶ学習方略の指導実践を行った。本年度は質問紙データとインタビューデータの分析を行った。指導した方略の使用を1-2年目に増加させ,3年目にも安定的に使用した生徒と,3年目にその使用が不安定になった生徒が存在し,それらの生徒の違いについて検討した。この研究については現在論文投稿中である。 (2)-2. 英語学習の初期からつまずいた学習者に対する学習方略の指導について,高校教師と協同しながら開発・実施した。そもそも単語が読めない学習者に対し,発音ルールを活用する方略を指導した結果,ルールに対する意識が高まり,一部の学習者は自主的に方略を使用し始めた。一方,方略の自立的な使用の難しさも明らかになり,学校の通常授業との継続的な協働の必要性も示唆された。
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