IoT社会におけるセンサ・データ通信デバイスの需要の爆発的増加に伴い、低コストで大量生産が可能な半導体材料、ならびにデバイスの電波による給電・制御に関する研究が加速している。低温の塗布プロセスにより製膜可能な有機半導体を用いたトランジスタは高い生産性を有する材料として期待されているものの、無線給電方式を実装する上では現在作製されている有機半導体薄膜トランジスタの5~10倍以上の応答速度の向上が必要となる。本研究では、有機トランジスタの応答速度の向上のボトルネックとなっている、電極・有機半導体の界面および半導体バルクに存在する接触抵抗に関して、材料特性を損なうことのないデバイス実装技術の開発により低減することを目的とし、高分子半導体材料を用いた新しいトランジスタ構造の作製、およびコンタクトドーピングについて検討を行った。また、センシング・通信デバイスにおいて必要となる回路素子の開発を行った。現在までに確立されている大面積有機半導体単結晶の製膜、および単結晶に由来する電気的特性の均質性を利用することにより、トランジスタ回路駆動の安定性が向上することを示した。それを利用し、高度な設計を必要とするアナログ回路の開発を執り行い、その速度についての評価も行った。本研究の結果は有機半導体ICにおけるフロントエンドプロセスの確立に与するものであり、有機半導体デバイスの社会実装の実現を強固に後押しするものである。
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