研究課題
本研究では、生体小分子の局所濃度や酵素活性といった生体内の動的微小環境を、組織透明化技術を用いて三次元観察するための手法の確立を目指した。動的微小環境は生命現象や疾患病理に関与しており、生体イメージングの重要な観察標的である。一方、透明化イメージングにおいては透明化処理の過程でそれらの位置情報が失われるため、原理的に観察が困難である。そこで本研究では、微小環境に応答して近傍のタンパク質と共有結合を形成する分子プローブを用いることでこれを克服しようと試みた。さらに、生体夾雑環境下でも高選択的に進行する銅触媒クリック反応を用いて、臓器レベルの大きな組織を切らずに蛍光染色する手法の開発を目指した。共有結合形成型分子プローブと、汎用性の高いクリック反応を用いて蛍光染色を行う本手法を組み合わせることで、様々な動的微小環境を標的とする組織透明化イメージングが実現可能と考えられる。本年度は、前年度に見出した組織クリック反応染色の効率的な条件をさらに最適化し、臓器全体の組織蛍光染色法として確立した。本手法と、すでに開発済みの低酸素分子プローブを用いることで、腫瘍全体の低酸素3Dイメージングに成功した。またクリック反応型分子プローブは、蛍光団を結合している一般的な蛍光分子プローブと比べて低分子化が可能であるため、脳移行性を有するのではないかと着想した。実際、低酸素血症モデルマウスに対してクリック型低酸素プローブを用いたところ、予想通りプローブは脳移行性を示し、最終的に全脳3D低酸素イメージングに成功した。本研究では、クリック反応を用いて生体組織を効率的に蛍光染色する手法を開発し、動的微小環境の一つである低酸素状態の臓器全体3D透明化イメージングを実現した。本手法は、クリック反応の汎用性の高さから様々な標的への応用が可能と考えられ、医学・生物学研究に資するイメージング技術として期待される。
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Analytical Sciences
巻: - ページ: -
10.1007/s44211-024-00520-y
ChemRxiv
10.26434/chemrxiv-2024-sdjss