昨年度までに高品質超伝導回路を作製するための手順を確立しており、この手順に従って作製した超伝導回路を用いて今年度は、2次の非線形性を用いた共振器中の電磁波モードの状態制御、共振器中の電磁波モードの状態に対する量子状態トモグラフィについて実験を行った。
1つ目および2つ目の実験について、2次の非線形性を持つ超伝導量子ビットに外部からマイクロ波を印可し、量子ビットと共振器の間にビームスプリッタ型相互作用および2モードスクージング型相互作用を同時に誘起した。これらの相互作用が同時に発現することにより、制御変位操作と呼ばれる、ボソニック符号を用いた共振器の状態に対するエラー訂正操作に必要な制御手法を実現した。私たちの実現した制御変位操作は従来手法と比べて超伝導共振器に対する強いマイクロ波ドライブが必要ないという特徴を持ち、従来手法ではこの高強度のドライブによって超伝導共振器の感じるノイズが増強されてしまうという問題点があったが、これを回避可能であるという利点を持つ。さらに、実現した制御変位操作を用いて共振器中の電磁波モードの状態に対する量子状態トモグラフィ実験を行い、ボソニック符号に用いることが可能な猫状態と呼ばれるコヒーレント状態の重ね合わせからなる状態の生成を行うことにも成功した。
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