研究課題/領域番号 |
22J15286
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 勝久 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 肝機能障害 / 薬物誘導性肝機能障害 / レガシーリソースの利活用 / 免疫応答 / Deconvolution / 層別化解析 / バイオインフォマティクス / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
薬剤誘導性肝機能障害は急性肝不全の最大の原因である。免疫応答はその進行において極めて重要であるが、各種免疫細胞と進行機序との関係性は、代表的なモデルで示されているに過ぎず、普遍性や複数存在する細胞種の寄与率は不明である。また、肝臓における免疫応答と薬物の特徴との関係性は全く明らかになっていない。本研究では、薬剤誘導性肝機能障害の進行機序理解、及び予測精度の向上を志向し、薬物と免疫応答を結びつける情報を集約するデータの取得に取り組む。取得したデータより包括的解析を行い、肝機能障害進行機序に迫る生物学的知見を取得する。ドメイン知識を活かして自らデータを適切かつ持続的に収集する方策、及び既存の大規模データベースより免疫情報を抽出する方策、二つの方策で実施する。 方策1: 文献を参照し複数選定した肝機能障害を惹起する化合物について、肝機能障害マーカー、肝臓中の免疫細胞の分布変化、肝トランスクリプトームを同一マウス個体にて取得した。方策2:ラットにおける主要免疫細胞を対象としたDeconvolution法を確立した。これにより、既存大規模毒性データに免疫細胞遊走に関する情報を組み込み、データベースを拡張、解析することが可能になった。 取得した二つのデータは以下の点で強力である。第一に肝機能障害での免疫細胞種の関係性について包括的な視点をもたらす。既存モデルは構築条件が異なるため比較できないことに加え、数が少なく普遍性に乏しい。一方、本データを構成する化合物群は多様であり、比較可能であるため、免疫細胞種の寄与の本質的な理解に資する。第二に本データは化合物と肝臓内の免疫応答とを結びつける世界初のデータソースであり、様々な個体での化合物特性予測に資する基盤となる。上の性質を持つ本研究の成果物は、これまでのデータベースとは全く異なるスペクトルの情報を提供し、肝機能障害研究を強力に推し進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
方策1について 当初の計画通り選定した肝機能障害を惹起する化合物について、肝機能障害マーカー、肝臓中の免疫細胞種の分布変化、肝トランスクリプトームを同一マウス個体にて取得した。 方策2について これまでの我々の研究によりラットにおける主要免疫細胞を対象としたDeconvolution法が確立した。これにより、既存の大規模な毒性データに免疫細胞遊走に関する情報を組み込み、データベースを拡張、解析することが可能になった。また、現在拡張されたデータベースの包括的解析により、新規生物学的知見を抽出している。 このように、研究計画と比べ、方策1, 2ともに順調に研究は推移している。加えて方策2については研究計画を当初の予想より前倒しで進められており、区分1と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ドメイン知識を活かして自らデータを適切かつ持続的に収集する方策、及び既存の大規模データベースより免疫応答情報を抽出する方策、二つのアプローチについて。 方策1について 現在データソースの公開、論文化を進めると同時にデータの解析を進めている。本データの解析により、好酸球の集積に関して興味深い知見を取得済みである。マウスへ化合物を投与し、肝臓における免疫細胞や受容体、サイトカイン等を測定することでメカニズムや重要性を探索する。 方策2について 現在データソースの公開、論文化を進めると同時に既存大規模毒性データベースの解析を進めている。ラット大規模毒性データベースOpen TG-GATEsの解析により、肝類洞内皮細胞とそのギャップについて興味深い生命現象を確認している。ラットへ化合物を投与し、肝臓内の免疫細胞集積のFACSによる解析、肝類洞内皮細胞の細胞死、ギャップの形成等のパラフィン切片の免疫染色、走査電顕による解析、肝類洞内皮細胞のギャップ形成のモジュレーターであるMMP阻害剤等を用いることでそのメカニズムについて研究を進める。
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