薬剤誘導性肝機能障害は米国における急性肝不全の最大の原因である。免疫応答は進行機序において極めて重要である一方で、提唱される各種免疫細胞と進行機序との関係の普遍性や、複数存在する細胞種の寄与率は不明である。本研究では、薬剤誘導性肝機能障害の進行機序理解、予測精度の向上を志向し、薬物と免疫応答を結びつける情報を集約するデータベースの構築に取り組んだ。自らデータを適切かつ持続的に収集する方策、及び既存大規模データベース(DB)より免疫応答情報を抽出する方策、二つのアプローチで実施した。 方策1について、選定した肝機能障害を惹起する化合物について、肝機能障害マーカー、肝臓中免疫細胞種の分布変化、肝遺伝子発現を同一マウス個体にて取得し、DBを構築した。本DB解析により、galactosamine投与による肝臓への好酸球の集積、後述するDeconvolution法に用いる各細胞の遺伝子発現について、細胞の組み合わせの予測精度への重要性を見出した。取得データの公共DBでの公開の他、本成果は生物情報学専門誌、NAR Genomics and Bioinformatics誌に掲載された。 方策2について、Deconvolution法は細胞比率をオミクスデータより取得するインシリコ解析手法である。本研究によりラットにおける主要免疫細胞を対象としたDeconvolution法が確立した。ラット大規模毒性DB、Open TG-GATEsの解析により、肝毒性を引き起こす16化合物は免疫細胞の遊走パターンに基づいて4クラスターに層別化された。各クラスターは異なる生物学的変動に対応していた。取得データの公共DBでの公開の他、本成果は毒性学専門誌、Toxicological Sciences誌に掲載された。
|