研究課題/領域番号 |
22J15382
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 雄大 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 彗星 / 希薄大気 / 水素ガス / ひさき衛星 / Comet Interceptor / 放射伝達 / 紫外線観測 / D/H比 |
研究実績の概要 |
彗星は地球の水の起源の候補天体や微惑星の特徴を留めた始原的な天体として注目されている。しかし彗星大気の観測から推定される彗星の水放出量 (活動度) は観測手法・観測装置によって大きく異なる評価値となることがしばしばであり、大気中で生じる物理過程のさらなる制約が必要である。 本研究ではひさき衛星による彗星大気中のLy-α線の放射輝度分布を説明するために、大気中でのLy-α線の多重散乱効果を考慮した放射伝達モデルを構築した。その結果、ひさき衛星で観測された彗星待機中のLy-α線の放射輝度分布を再現することができた。同モデルを用いると、彗星では水素原子の柱密度が5×10^{22} /km^2を超えると多重散乱効果が卓越することが分かった。また、光学観測によってD/H比を測定する場合、重水素のLy-α線 (波長121.534 nm) は光学的に薄いと見做せる一方で、水素のLy-α線 (波長121.567 nm) は核付近で光学的に厚くなるため、核に近づくにつれてD/H放射輝度比が急激に上昇することが分かった。 併せて、Comet Interceptorミッションに搭載する光学観測機器の開発も行った。放射光施設にて主にD/H比を測定するための光学素子 (吸収セル) の性能評価実験を行い、吸収セルに印加する電圧や内部に封入する水素ガスの圧力等のパラメータを最適化した。 最後に、構築した放射伝達モデルと実験で求めた光学系の性能を組み合わせることでComet Interceptor搭載水素イメージャの観測模擬データを作成し、彗星水素大気の観測可能性およびD/H比の測定可能性について定量的に検討し、小型光学系でも測定可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ひさき衛星の観測データと比較するための放射伝達モデルの構築が当初想定していた速度で進み、早い段階で観測データとも整合した。また、Comet Interceptorに搭載する光学素子の性能評価実験も (実験ラインの不調に見舞われたこともあったが) 結果的には想定していた期間で十分なデータを得ることができた。構築したモデルと実験結果の融合的研究も特に問題なくスムーズに進み、想定通りの時期に結果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは前年度に得られた結果を複数本の論文としてまとめ、投稿する。 また、Comet Interceptor計画の進行に合わせて光学系の設計・開発および各素子の性能評価実験を進める。同時にひさき衛星の紫外線分光観測データを水素原子以外についても解析し、各彗星の化学特性を比較する。 BepiColombo探査機の水星周回軌道投入も近づいているため、彗星で構築したモデルや知見を活かした水星希薄大気の研究を適宜行うことも検討している。
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