研究課題/領域番号 |
22J20049
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西本 和生 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | バイオハイブリッドセンサ / マイクロ流体デバイス / コンカナバリンA / コラーゲンゲル / フェロモン / ハイドロゲルカプセル |
研究実績の概要 |
センサ細胞として用いるために、特定の場所に浮遊細胞である酵母を固定する必要があった。そこで、本年度は①酵母のマイクロ流路への固定法、および、②構築株のコラーゲンゲルアレイへの固定法を検討した。①:3Dプリンタを用いて、PDMS(Polydimethylsiloxane)のモールドを作製した。作製したPDMSを数センチスケールのガラスプレートに接着させ、流路内をコンカナバリンAをコーティング後、酵母を流路内に固定した。固定後、センシング化合物モデルである、酵母フェロモンを溶解した培地を灌流した。灌流後、酵母がフェロモンに反応して形態が変化することを顕微鏡を用いて確認した。その結果、流路内で約7割の酵母のフェロモン応答を確認できた。以上から、酵母のマイクロ流路内への固定と、化合物センシングに成功した。これは、酵母のガラスプレートへの実装にマイクロ流路および、コンカナバリンAが適していることを示している。②:複数種類の酵母細胞をアレイ化した状態で固定するために、ハイドロゲル中への細胞の固定する手法を構築した。PDMS中に3Dプリンタで作製したピラーを埋め込んだデバイスを作製した。ピラーを引いて、コラーゲンゲルを吸引することによって、アレイ化した複数のハイドロゲルを直径約6 mmのスペースに配置することに成功した。さらに、フェロモンに反応してGFPを発現する酵母を固定した後、フェロモンを処理ののち、GFPの発現を確認した。以上から、ハイドロゲルを用いることで、酵母を数ミリスケールの空間に、複数種配置することができる可能性があることを示している。 本年度は、研究実施計画の「②酵母のガラスプレートへの実装、最適化」にあたる。本年度の研究成果により、ガラスプレートへの適用には、マイクロ流路、コンカナバリンAが適しており、複数種類の酵母の配置にはハイドロゲルが有用であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究目的である「酵母の環境ストレス耐性を活かした、乾燥耐性を有した高感度匂いセンサの作製」に向けて、酵母のセンサへの固定方法を構築した。①コンカナバリンAを用いたマイクロ流路への固定と、②コラーゲンゲルを用いたPDMSデバイスへの固定に成功したことから、順調に進捗していると考えている。当初の計画では、匂い物質であるオイゲノールに応答してGFPを発現する酵母株を作製する予定であったが、本年度は、酵母のフェロモンに応答してGFPを発現する酵母株を作製し、この構築株をプルーフオブコンセプトのモデルとして用いた。また、乾燥耐性評価に対したデバイスの評価は引き続き行う必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、①匂い物質に応答して、GFP等の蛍光を発する酵母株の構築、②センサのデバイスへの実装と乾燥耐性評価を行う。①:オイゲノールのGPCRの配列を入手し、オイゲノール需要GPCRからのシグナルをGFP発現まで伝達するのに必要なタンパク質の特定を行う。また、オイゲノール添加後、細胞の蛍光量を計測することで、センサ細胞の性能を反応時定数と分解能をパラメータに評価する。②センサ細胞を固定ののち、乾燥後に化合物センシング性能が低下しないかを調べる。必要であれば、ハイドロゲル内に細胞を固定するなど、固定方法、乾燥方法を検討する。
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