研究課題/領域番号 |
22KJ0996
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西本 和生 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | バイオハイブリッドセンサ / バイオ3Dプリンタ / Cell Encapsulation / Hydrogel particle |
研究実績の概要 |
「嗅覚受容体を発現する酵母を用いた乾燥耐性匂いセンサの開発」のため、本年度は、フェロモンセンシング酵母を用いて、センサ酵母を①光学センサ上に配置する手法開発と②酵母を乾燥保存する手法開発の2点に主に取り組んだ。 ①細胞をセンサ素子として用いるためには、細胞が生存、機能を維持した状態でセンサ上に配置される必要がある。そこで生体適合性の高いバイオプリンタを用いて、細胞をハイドロゲルの中空間にトラップするシステムを開発した。さらに、ハイドロゲル内での細胞の生存と、フェロモンセンシング機能を確認した。このことにより、酵母センサ素子として移動固定が可能なセンサチップの作製を達成した。この成果は、国内学会1件、国際学会1件にて報告した。加えて、複数種類の酵母を光学センサによって撮影された1枚の画像で解析するために、直径約6ミリのスペースに16個のハイドロゲルを個別に配置できるデバイスを作製した。実際に、ハイドロゲルに酵母を懸濁してアレイ状に配置することに成功し、国際学会1件にて報告した。 ②乾燥保存した酵母をセンサに適用するために、均一な細胞数の乾燥酵母をアレイ状チャンバーなどに配置する必要がある。既存の乾燥酵母作製方法では、細胞数のコントロールが困難であり、また、細胞数を均一ではなかった。そこで、3Dプリンタで作製したデバイスを用いることで、小スケールな、均一な細胞数をもつ乾燥酵母タブレットを作製した。タブレットごとの細胞数の分散と、数日間乾燥後のフェロモン応答について評価を行った。その結果、nMレベルでのフェロモン検知が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は嗅覚受容体を発現する酵母を作製する予定であったが、今年度は酵母のフェロモンを検知して蛍光を発する酵母細胞株を用いてセンサの開発を行なった。特に、細胞が機能を維持した状態で化合物検知できる手法の開発に取り組んだ。昨年度はマイクロチャンバー内に酵母を固定し、フェロモン検知を達成したが、光学センサ等で観察するためには、酵母の場所を固定する必要があった。そのため、バイオ3Dプリンタを用いて、ハイドロゲル内にカプセル化する手法を考案した。3Dプリンタを用いることにより、ハイドロゲル中空空間に酵母を固定化することができた。中空内での細胞の増殖と、フェロモン検知を確認し、本手法を国際学会1件(査読あり)、国内学会1件にて報告した。また、乾燥酵母をセンサとして応用するために、乾燥酵母タブレットを作製した。フリーズドライ法などの、既存の酵母乾燥方法では、乾燥後に細胞数をコントロールすることが困難であった。細胞数が変化すると物質検知の感度が変化してしまう。そこで、3Dプリンタにより作製したデバイスを用いて、均一な細胞数を含む乾燥酵母タブレットを作製した。タブレットごとの細胞数の分散と、数日間乾燥後のフェロモン応答について評価を行った。その結果、nMレベルでのフェロモン検知が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、センサ酵母を①光学センサ上に配置する手法開発と②酵母を乾燥保存する手法開発の2点に取り組んだ。さらに、細胞を生存状態でカプセル化する技術を開発しているUniversity of Los Angeles校のDino Di Carlo研にVisiting Graduate Scholarとして留学を開始した。彼らは直径マイクロサイズのハイドロゲルパーティクル中に酵母をカプセル化しており、さらに、約2kHzのスピードでパーティクルを作製する技術を有している。その技術を酵母センサに応用することで、大量生産可能な、高集積化されたバイオハイブリッド酵母センサの開発を見込んでいる。 今後は、酵母の光学センサへの適用手法の構築と、センサ素子として応用可能な乾燥酵母タブレットの作製を達成した。今後は、これまでの知見とDino Di Carlo研のハイドロゲルパーティクル作製技術を組み合わせることで、産業応用も可能な乾燥耐性匂いバイオハイブリッドセンサの開発に取り組んでいく。
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