研究課題
事前実験より、大腸菌において安定なヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体として発現されることが確認されたBacillus subtilis由来のヒスチジンキナーゼBceSおよびABC輸送体BceABについて、大スケールでの大量発現による精製方法を模索した。その結果、GFP-Nanobodyレジンを用いた、ヒスチジンキナーゼBceSに付加したGFPタグに対するアフィニティー精製が手法として適していると判断された。ここで、GFPタグはTEVプロテアーゼ切断配列を介してBceSのC末端側に付加されており、TEVプロテアーゼを用いた切断により目的産物であるBceS/BceAB複合体がGFP-Nanobodyレジンから溶出される。しかし、現状のプロトコルではタグ切断による目的産物の溶出量が構造解析には不十分であると考えられたため、プロテアーゼ切断配列の検討等によるコンストラクトの最適化、およびタグ切断に使用するプロテアーゼ量の検討等による精製手法の最適化を行った。現在コンストラクトとしてはTEVプロテアーゼによる十分なタグ切断が確認されたため、今後は引き続き精製手法の最適化を行い、構造解析に十分な量の安定なBceS/BceAB複合体を調製する精製系の確立を目指す。
3: やや遅れている
カチオン性抗菌ペプチド(CAMP)検知機構の解明を目的とする本研究において、1年目はCAMP検知を担うヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体の精製系を確立し、CAMP認識前のヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体の構造解析を行うことを予定していた。BceS/BceABは大腸菌において安定なヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体として発現されることが確認されていたものの、アフィニティー精製時のBceS/BceAB複合体の性状が想定よりも悪く、構造解析に十分な量のBceS/BceAB複合体を調製することができなかった。そのため、発現コンストラクトや精製手法の最適化に時間を費やすこととなり、当初予定していた構造解析まで至らなかった。
引き続きアフィニティー精製時に使用するTEVプロテアーゼの量や精製の各ステップにおけるバッファー条件の検討・最適化を行い、構造解析に十分な量の安定なヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体を調製する精製系の確立を目指す。精製系の確立後はヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体の構造解析を行うとともに、CAMP認識時のヒスチジンキナーゼ/ABC輸送体複合体の構造解析および応答制御因子のリン酸化時のTCS/ABC輸送体モジュールの構造解析を行い、TCS/ABC輸送体モジュールによるCAMP認識から応答制御因子のリン酸化までの詳細な分子機構を解明することを目指す。
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