研究課題/領域番号 |
22J21036
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八尾 晃史 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 性分化 / 性スペクトラム / 真骨魚類 / トラギス / 生殖腺 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
近年,生物の性をオスとメスの二項対立的かつ生涯不変な現象ではなく,中間型も出現しうる雌雄で連続的かつ一生の間で変化しうるスペクトラム(性スペクトラム)として捉える動きが高まっている.しかしながら,どのようにして雌雄の中間型が出現するのか,またどのようにして性が変化するのかについては明らかでない.本研究では,性転換する魚類で見られる卵巣組織と精巣組織が同居した「両性生殖腺」という現象を雌雄の中間型のモデルケースとして捉え,メスが両性生殖腺を持つトラギスを材料として,両性生殖腺形成機構,すなわちメスの体内でオスの細胞が分化・維持されるメカニズムの解明を目指している. まずトラギス生殖腺の組織形態を明らかにするために,組織切片を作成して,メス両性生殖腺の構造,および両性生殖腺が性転換に伴い精巣に分化する過程を観察した.加えて,性転換に伴う生殖腺における細胞増殖・細胞死をマーカー遺伝子の免疫染色で検出した.その結果,メスの両性生殖腺には多数の卵母細胞に加えて少数の精原細胞,精母細胞が点在していた.性転換が開始されると,まず卵母細胞(卵巣組織)は維持されたまま,オスの生殖細胞が増加するとともに精子形成が進行し,その後に卵母細胞が消失して精巣への分化が完了した.この時,メスの生殖細胞である卵母細胞はアポトーシスにより消失するのに対し,卵母細胞の周囲に存在する体細胞(Vasa negative)の一部は性転換中に細胞増殖することが明らかになった.これらの増殖細胞は性転換後の精巣で再利用されていると考えられる. メスの体内でオスの細胞が分化するメカニズムを解明するには,両性生殖腺を構成する細胞ひとつひとつの発現プロファイルを得ることが有効と考えられる.そこで,先進ゲノム支援の支援を受けてメス両性生殖腺とオス精巣のシングルセルRNA-seq解析を実施した.現在,結果の解析を実施中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性転換に伴う両性生殖腺から精巣への変化に伴う組織変化と細胞動態を明らかにすることができ,現在この内容についての論文を投稿中であるため.また両性生殖腺形成機構を解明するために,生殖腺の遺伝子発現解析を行うことを予定していたが,先進ゲノム支援の支援を受けてシングルセル解析を実施することができ,当初の予定よりも高解像度のデータを取得することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に取得したシングルセルRNA-seqデータの解析を進める.両性生殖腺を構成する細胞集団を同定し,pseudotime analysisを用いてその分化過程を推定するとともに,メス/オス生殖腺由来の同じ種類の細胞集団間での遺伝子発現比較や,細胞間におけるリガンド・レセプター相互作用の解析を行うことで,メスの体内でオスの細胞が分化することを可能にする責任遺伝子を探索する.その上で,見出された遺伝子の機能解析をトラギス,またはモデル魚類であるメダカを用いて行う. また,両性生殖腺形成や性転換を制御する内分泌因子を同定するために,性ホルモン・生殖腺刺激ホルモンの測定および投与実験を行う.
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