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2022 年度 実績報告書

自他の境界の「揺らぎ」を司る神経メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J21085
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

黄 子彦  東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2025-03-31
キーワード観察恐怖タスク / 腹内側前頭前野 / 逃避行動
研究実績の概要

本研究の目的は、観察恐怖タスクを題材に、電気ショックを受けて恐怖反応を示すデモンストレーターマウスを観察する観察マウスを対象として、共感と区別の間で、自他の境界の揺らぎを司る神経メカニズムを明らかにすることである。
2022年度は、申請者が立ち上げた長時間の観察恐怖タスクにおいて、機械学習的手法に基づき、ビデオデータから観察マウスの行動を自動的に分類することに成功した。これまでの観察恐怖タスクを用いた研究では、すくみ行動が主に注目されてきたが、本研究では10秒単位と2秒単位でそれぞれ行動の分類を行うことで、逃避行動や観察行動と言った観察恐怖タスクに特異的な行動を含む、姿勢・動き・位置情報に基づく特徴的な行動要素を抽出することができた。また、共感に重要であり、観察恐怖タスク時に活動することが知られている脳領域である腹内側前頭前野を対象に、光遺伝学的抑制を行ったところ、観察マウスの逃避行動が減少することがわかった。このため、観察マウスの腹内側前頭前野に対し、脳内内視鏡を用いたin vivoカルシウムイメージングを行った。得られたデータの解析を行った結果、自動分類で得られた10秒単位の行動状態と、すくみ行動とに対応する神経細胞がそれぞれ存在することと、これらの情報を神経細胞集団の活動からデコードすることができることが分かった。さらに、自己及び他者の状態に対する選択性をもつ、相反する活動を示す2つの神経細胞集団が存在することを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では、本年度は三次元の記録に基づいた、観察マウスの行動の自動分類システムを立ち上げ及び、予備実験から得られた候補脳領域に対する光遺伝学抑制を行い、自己と他者の区別に関わる領域の特定を目標としていた。研究を進める中で、光遺伝学的抑制の結果、腹内側前頭前野は、これまで着目されてきたすくみ行動ではなく、逃避行動に関わることを示唆する結果が得られた。逃避行動はこれまでに確立した二次元の行動分類で十分評価できる見通しがたったため、研究計画を見直した。そこで、二次元の行動分類をさらに深め、また腹内側前頭前野の神経生理を明らかにすることとし、in vivoカルシウムイメージングを行った。結果として、腹内側前頭前野に自己と他者の状態の両方を表象する2つの異なる神経細胞集団を発見した。当初の計画とは異なる研究経過を辿ったが、ここまでの内容をまとめ、論文投稿に至ったため、当初の計画以上に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

現在投稿中の査読付き論文の改稿作業を行うとともに、自己と他者の情報処理をさらに解明するため、腹内側前頭前野の神経データの更なる検討を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 内側前頭前野における、観察恐怖課題での自己と他者の状態の表象2023

    • 著者名/発表者名
      黄子彦、ジョン・ミョン、田尾賢太郎、度会晃行、王牧芸、伊藤広朗、奥山輝大
    • 学会等名
      日本生理学会第100回記念大会
  • [学会発表] Neural representation of multifaceted behavioral states during observational fear2022

    • 著者名/発表者名
      Ziyan Huang, Myung Chung, Kentaro Tao, Akiyuki Watarai, Mu-Yun Wang, Hiroh Ito, Teruhiro Okuyama
    • 学会等名
      Keystone Symposia on Neurocircuitry of Social Behavior
    • 国際学会
  • [学会発表] 観察恐怖タスクにおける、内側前頭前野での多面的な行動状態の神経表象2022

    • 著者名/発表者名
      黄子彦、ジョン・ミョン、田尾賢太郎、度会晃行、王牧芸、伊藤広朗、奥山輝大
    • 学会等名
      NEURO 2022
  • [学会発表] Neural representation of multifaceted behavioral states during observational fear in the ventromedial prefrontal cortex2022

    • 著者名/発表者名
      黄子彦、ジョン・ミョン、田尾賢太郎、度会晃行、王牧芸、伊藤広朗、奥山輝大
    • 学会等名
      第21回東京大学生命科学シンポジウム

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公開日: 2023-12-25  

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