研究実績の概要 |
反射型回折格子を用いたIa型超新星残骸のX線観測データの解析を行なったが、親星の制限に繋がる元素組成比の推定までには至らなかった。その原因として、1)鉄族元素の中間的な電離状態(16-24階電離)をもつイオンからのL殻輝線の原子データが不足していること、2)元素組成比推定に用いるプラズマモデルと現実のプラズマの乖離があることの2点が挙げられる。 そこで当初の計画に加えて、核融合科学研究所(NIFS)にてプラズマ分光実験を実施し、そのデータの解析を行なった。NIFSの実験装置の1つであるLarge Helical Device(LHD)では、超新星残骸と同程度の温度をもつプラズマを安定して作ることができるため、このプラズマに超新星残骸に存在する鉄族元素(Fe, Mn, Ni)を注入することで、様々な電離状態をもつイオンからの輝線放射とプラズマの電離状態の時間発展を調べることができる。今回はLHDマンガンとニッケルをの注入実験を行い、さまざまな電離状態をもったイオンからのL殻輝線放射を分光し、各輝線の中心波長や放射率を測定した。その結果、L殻輝線の強度比が理論から予測される比よりも小さいことが明らかとなった。以上の結果は国際学会で発表し、査読付き論文として受理された。
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