研究課題/領域番号 |
22KJ1047
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大城 勇憲 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | X線天文学 / プラズマ物理学 / Ia型超新星 |
研究実績の概要 |
Ia型超新星爆発およびその残骸の流体数値計算を行う枠組みの構築を行なった。この枠組みを完成させる上で重要な部分は、(a) 流体方程式を解き残骸の運動学的な進化を計算する部分と、(b) 爆発の衝撃波によって加熱されたプラズマの温度や電離度の時間発展を解く部分と、(c) (b)で得られた温度、電離度をもとに熱的X線放射を予測する部分の3つに分けられる。今年度では、(b), (c)の部分の実装を完了することができた。 また、実装済みの部分を用いて、プラズマ加熱時の衝撃波速度をパラメータとするX線放射モデルを構築した。このモデルは衝撃波加熱後の温度や電離度の時間発展を自己無撞着に求めているため、観測したX線スペクトルから加熱時の衝撃波速度を直接求めることが可能である。そこで、このモデルを用いてChandra衛星による大マゼラン雲の超新星残骸N132Dの観測データの解析を行ったところ、実際に衝撃波速度を熱的X線放射から直接求めることに成功した。得られた衝撃波速度は先行研究と比較して妥当であり、構築したモデルの有用性を確認できた。ここまでの結果は天文学会で報告し、まもなく査読付き学術論文として投稿する予定である。構築したモデルは、論文が出版されたのちにこのモデルを世界中の研究者に向けて公開する予定である。今回の結果は、従来の衝撃波速度の測定方法であった固有運動測定に加えて独立かつ新たな手法を提供する重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、Ia型超新星爆発およびその残骸の流体数値計算を行う枠組みのうちの重要な部分の実装を完了した。また、実装済みの部分から超新星残骸の衝撃波速度を熱的X線放射から直接測定する新たな手法を提案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は流体方程式を解き残骸の運動学的な進化を計算する部分を実装し、数値計算の枠組みの完成を目指す。また、XRISM衛星の観測データへのアクセスがまもなく可能となるので、可能になり次第解析を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在執筆中の論文を今年度中の投稿を予定していたが間に合わなかったため、投稿を次年度に延期した。使用予定だった投稿費用は解析用PCの購入に使用した。このPCは元々次年度に購入予定だったため、本来の使用用途に変更はない。
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