研究課題/領域番号 |
22J21275
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 寿美香 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 再生 / アフリカツメガエル / 組織幹細胞 |
研究実績の概要 |
アフリカツメガエルの幼生は尾が切断されても1週間程度で脊索・脊髄・筋肉などの組織を含む完全な尾を再生することができる。ツメガエル幼生尾再生は組織の脱分化や分化転換が観察されないことから、各組織に存在する幹細胞由来の未分化細胞が産生・集合して再生芽を形成し、それぞれが由来する組織の細胞に分化して新たな尾(再生尾)が形成されると考えられている。しかしツメガエルにおいては殆どの組織で幹細胞マーカー遺伝子が同定されておらず、組織幹細胞の挙動を直接的に調べるのが難しいため、各組織幹細胞を活性化する分子機構や未分化細胞を経て分化組織が形成される細胞系譜は不明である。本研究は、ツメガエル幼生尾の再生組織を構成する分化細胞の由来となる各組織幹細胞と、それらが再生組織中の分化細胞に至る前駆細胞系列をsingle cell RNA-Seq(scRNA-Seq)解析を用いて同定することを目指している。 当該年度では、組織中に微量に存在すると考えられる幹細胞をscRNA-Seqで解析するために、まず複数種で有効性が示されている幹細胞純化法のside population法をツメガエルに適用して幼生再生芽の組織幹細胞の濃縮を試みた。side population法は組織幹細胞が一般に高い薬剤排出能を持つことを利用し、DNA結合色素Hoechst 33342に対して低染色性となる分画(side population; SP)を分取することで組織幹細胞が濃縮された細胞集団を得る手法であり、ツメガエル幼生尾・再生芽においてもSP分画が検出された。次に分取したSP分画を用いてscRNA-Seqを実施し、先行研究の幹細胞非濃縮幼生尾scRNA-Seqデータと統合して解析を行った結果、SP分画において筋衛星細胞や神経前駆細胞の濃縮が確認されたことから、SP分画には他にも未知の組織幹細胞が含まれると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織中に微量に存在すると考えられる幹細胞を濃縮するために、組織幹細胞のもつ薬剤排出能を利用した幹細胞濃縮法であるSide population (SP)法をツメガエル幼生尾再生芽に適用した。酵素的に細胞分散した再生芽において、Hoechst 33342低染色性を示すSPを見出した。またSPを単離してsingle cell RNA sequencingを行い再生芽全体のデータと統合・比較することで既知の組織幹細胞(筋衛星細胞・神経前駆細胞)がSPに濃縮されていることを確認した。この結果については、Development, Growth & Differentiation誌に投稿、掲載された。分取したSP分画についてのsingle cell RNA-Seq解析では、過去に実施された幼生尾再生組織全体のsinglecell RNA-Seqデータを用いた分化細胞のクラスタと統合することで各組織の細胞変化・分化状態の時系列を推定した。以上の進展はおおむね研究実施計画通りであった。
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今後の研究の推進方策 |
single cell RNA-Seq解析の結果について、各組織の疑似系列と分化細胞クラスタとの対応付けにより推定された組織幹細胞に特徴的に発現している遺伝子を探索し、組織幹細胞マーカーの候補とする。得られた候補遺伝子を発現する細胞が実際に組織幹細胞としての性質を持つか明らかにする。具体的には、組織幹細胞マーカー候補遺伝子を発現する細胞を標識して尾の切断時に標識細胞由来の分化細胞がみられるかを調べる。さらに標識細胞の移植実験により、当該細胞の自己複製能についても検討する。これらを各組織の推定幹細胞について行うことで幹細胞を同定し、各組織幹細胞の活性化様式の記述や、活性化に関わる因子の同定を試みる。
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