研究課題/領域番号 |
22KJ1051
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 寿美香 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
キーワード | 再生 / アフリカツメガエル / 幹細胞 / 衛星細胞 |
研究実績の概要 |
アフリカツメガエルの幼生は尾が切断されても1週間程度で脊索・脊髄・筋肉などの組織を含む完全な尾を再生することができる。ツメガエル幼生尾再生は組織の脱分化や分化転換が観察されないことから、各組織に存在する幹細胞由来の未分化細胞が産生・集合して再生芽を形成し、それぞれが由来する組織の細胞に分化して新たな尾(再生尾)が形成されると考えられている。しかしツメガエルにおいては殆どの組織で幹細胞マーカー遺伝子が同定されておらず、組織幹細胞の挙動を直接的に調べるのが難しいため、各組織幹細胞を活性化する分子機構や未分化細胞を経て分化組織が形成される細胞系譜は不明である。本研究は、ツメガエル幼生尾の再生組織を構成する分化細胞の由来となる各組織幹細胞と、それらが再生組織中の分化細胞に至る前駆細胞系列、さらに幹細胞活性化を通して尾再生に寄与する新規な分子機構を明らかにすることを目指している。 当該年度では、前年度に筋衛星細胞や神経前駆細胞の濃縮を確認したside population(SP)分画においてsingle cell RNA-Seq解析を行い、疑似系列解析によって各組織の細胞系譜とその起点となる幹細胞集団を推定、推定幹細胞で発現する遺伝子の探索を行った。疑似系列解析の結果、表皮・杯細胞・筋肉/体節・神経など尾を構成する主要な細胞の系譜が推定され、筋肉/体節・表皮・杯細胞については各系譜の起点となる推定幹細胞集団が同定された。筋肉クラスターについてはさらに解析を進め、推定幹細胞集団において特異的に発現する遺伝子の一つとして遺伝子Xを同定した。遺伝子Xについて幼生尾で発現局在解析を行った結果、筋組織特異的に点在する発現が認められた。遺伝子Xは既知の筋衛星細胞マーカー遺伝子(pax7)よりも筋組織に限局した発現を示すことから、より有用な筋幹細胞マーカー遺伝子となる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SP分画においてsingle cell RNA-Seq解析を実施した結果、疑似系列解析によって表皮・杯細胞・筋肉/体節・神経など尾を構成する主要な細胞の系譜が推定され、SP分画の細胞があまり確認されない組織もあったものの、筋肉/体節・表皮・杯細胞については各系譜の起点となる推定幹細胞集団が同定できた。さらに、各組織の疑似系列と分化細胞クラスタとの対応付けにより推定された、組織幹細胞集団に特徴的に発現している遺伝子を探索し、筋肉の推定幹細胞集団において特異的に発現する遺伝子の一つとして遺伝子Xを同定した。推定幹細胞集団の発現変動遺伝子を複数組織について調べられなかったため当初の方向性とは少し路線変更となったが、目的としていた幹細胞活性化を通して尾再生に寄与する新規な分子として有力な遺伝子Xを同定することができ、以上の内容はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は遺伝子Xがどのような分子機構で尾再生時にはたらくのか、その発現と機能を解析する。具体的な発現解析としてはqRT-PCRによる尾再生時経時的発現解析、衛星細胞マーカーpax7やBrdUによる増殖細胞との共解析などを行う。機能解析としてはCRISPR/Cas9法により遺伝子Xをノックダウンした個体の幼生尾再生能の評価、発生への影響の解析、遺伝子Xノックダウン個体のbulk RNA-seqによる発現変動遺伝子の検出などを行う。 また次年度が本研究課題の最終年度であるため、研究内容をまとめ論文を執筆・投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に対する助成金が獲得できたため、当初の予定より旅費の使用額が減ったため。 次年度にRNAシーケンスを外注する必要が生じたため、それに使用する予定である。
|