研究課題/領域番号 |
22J21356
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松宮 和生 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
キーワード | ドラッグデリバリー / ゲル / 微粒子 / 数値流体力学 |
研究実績の概要 |
現在,非アルコール性脂肪肝炎由来の肝硬変の治療は対症療法が一般的である.微粒子を血管に留置する局所療法は疾患部位で直接薬物放出を可能にするものの,血流の閉塞による副作用が重篤な問題である.トーラス状の微粒子を留置することにより,血流を遮断せずに薬物を放出することが可能となる.本研究では,肝硬変の治療を目的とした血管内に薬物徐放担体を直接留置するトーラス状ハイドロゲル微粒子(TSMs)の開発を目指している. 本年度は,高い生体適合性を持つアルギン酸を用いて,モデル薬物を封入したTSMsの作製と評価を行った.TSMsはエレクトロスプレー装置を用いて作製した.さらにTSMsの機械的強度と化学的安定性を高めるため,作製後に高濃度の架橋溶液を添加する後架橋処理を施した.後架橋処理はTSMsの貯蔵弾性率を高め,Tris緩衝液中の分解を抑制し,一部のモデル薬物の放出時間を延長することが分かった.特に,Baイオンによる後架橋は14日以上もTris緩衝液中で残存しており,カチオン性置換基であるジエチルアミノエチル基(DEAE)を有する蛍光デキストランを7日間かけて放出した.また,蛍光相関分光法を用いてハイドロゲル内の蛍光デキストランの拡散係数の測定を行った.蛍光デキストランの拡散係数はTSMsの薬物放出試験の結果から得られる値と大きく異なる結果を示した.これらの成果は国内,国外で合計6つの学会,研究会,シンポジウムで報告した.これらの成果をまとめ,2023年度中に論文を投稿する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,(1)粒子の作製と物性評価,(2)粒子内における薬物の放出挙動の解明,(3)実験動物を用いた治療効果の検証,(4)数値流体力学を用いたTSMsの流動シミュレーションの4つから構成される.本年度は(2)の粒子内における薬物の放出挙動の解明に向けた評価系の確立に注力した.また,当初予定した粒子の流動シミュレーションの予定を前倒しで行っており,そのため,予定していた(1)の新規粒子の作製に遅れが生じている.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,これまで確立されていなかったTSMsの評価系を確立した.2022年度は前項に示した(1)の新規粒子の作製と物性評価,(2)の新規粒子,薬剤を用いた粒子内における薬物の放出挙動の解明を中心に進める予定である.また,(1)で得られた物性値を用いて,(4)の数値流体力学を用いた流動シミュレーションを行い,粒子の流動時における変形や流動抵抗などを評価することで,粒子の力学的特性の調整にフィードバックする予定である.2023年度には,これまでに得られた知見を基に実験動物を用いて肝硬変モデルマウスの作製とTSMsによる治療効果を検証する.
|