研究課題/領域番号 |
22KJ1058
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小河 健介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ダイヤモンド空孔中心 / 量子センサ / マイクロ波 / スピントロニクス / スピン波 |
研究実績の概要 |
本研究課題はダイヤモンド量子センサを用いた測定技術を開発し、磁性体に適用することでこれまで他の手法では観測が難しかったダイナミクスの可視化を行うことを目的としている。 2023年度は第一にNVセンタを用いたマイクロ波センシング技術の開発を行った。NVセンタを用いたマイクロ波センシングは一般的に共鳴マイクロ波による Rabi 振動測定によって行われるが、この手法では検出可能なマイクロ波周波数が NVセンタの共鳴周波数付近に限られ、広帯域な測定を行うことは難しいという課題があった。この課題を解決する手法として先行研究でAC Zeeman 効果を用いたパルス測定が提案されているものの、原理実証実験にとどまり、現実の系への適用は未だ行われていなかった。そこで、この手法を現実の系へ適用し広帯域のマイクロ波を測定することでマイクロ波共振器の周波数特性の可視化、そしてマイクロ波分布のイメージングを実証した。さらに、より高度なパルスシークエンスと組み合わせることにより感度を向上することが可能であることを実証した。これらの成果に関して論文にまとめた結果が Applied Physics Letters 誌から出版された。 第二に、イットリウム・鉄・ガーネット (YIG) のコヒーレントスピン波測定を発展させた。前年度までの研究で、広視野顕微鏡を用いたスピン波のコヒーレントな伝搬をイメージングすることでスピン波の分散関係や緩和長といったパラメータが導出できることを実証したが、本年度はこれらに加えて系統的な測定と詳細な解析を行うことで定量的な結果を取得した。その結果、特に非線形スピン波に関して興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は計画していたNVセンタを用いたスピン波ダイナミクスの可視化に関して大きな前進が見られたため。第一に広帯域マイクロ波センシング手法の開発に関して論文を出版することができた。この手法は直接、スピン波などのマイクロ波センシングに応用可能な技術でありNVセンタの適用範囲を広げる点で大きな価値があると考えている。またYIGのスピン波伝搬イメージング測定に関しても新たな知見が得られ、順調な進展が見られる。以上により、このような判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の成果をもとに、ダイヤモンドNVセンタを用いた磁性体ダイナミクスの研究をさらに進める。スピン波伝搬測定に関して昨年度までの研究に加えて追加の測定や解析を行うことで、より知見を深めていく。また開発した広帯域マイクロ波センシング手法に関しても実際の磁性体に適用することで先行研究ではアクセスが難しかった磁性体ダイナミクスの可視化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は実験研究のため研究遂行に必要なサンプルや実験備品が存在するため。具体的には実験で必要な磁性体サンプルや光学素子の購入に使用する。また得られた成果に関して、APS March Meeting 2025 で発表する予定であり、渡航費や参加費に使用することを想定している。
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