研究課題/領域番号 |
22J21412
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚本 萌太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 量子センサ / 機械学習 / ナノダイヤモンド / 磁壁クリープ / 二次元物質 / 反強磁性体磁化 / 磁気光学カー効果 / 光学収差 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、メゾスコピック領域の現象である磁区や磁気渦に対して、ダイヤモンド量子センサによる局所磁場の精密観測を通じて、量子効果や多体効果とその空間的揺らぎを定量的に議論し、その構造を明らかにすることである。 本計画の第一目標である磁気光学カー効果との同時測定技術の開発は、前年度後半から着手し始めた。その際に、光学収差による影響を大きく受けることが判明した。このため、本年度前半においては光学収差の影響を理論と実験の双方において評価し、その影響を抑制した測定系の構築を行った。この結果については、学会発表を行ったうえで、論文を執筆中である。 おなじく第一目標の、機械学習による測定確度向上については、ナノダイヤモンドにおける測定に適用した。従来手法と比較して最大で50倍の確度の向上を達成し、物性測定に実用できることを明らかにした。また、異なる磁場間でのスペクトルの類似度の評価により、ナノダイヤモンド量子センサの適用限界も判明した。本成果は学会発表の上、筆頭著者として論文を出版し、プレスリリースを発行した。 本年度後半には、磁気光学カー効果との同時測定技術の開発に成功した。同測定系を用いて、強磁性体の磁壁クリープ中の磁場分布の様子を動画的に取得することに成功した。本結果は学会発表を行い、現在は論文執筆に向けての解析を行っている。 また、第二目標の1つである、低磁場での測定確度向上についての実験も行った。測定確度を悪化させる要素と悪化させない要素の違いを明らかにした。本結果は学会発表のうえ、論文を投稿中である。 さらに、二次元物質h-BN中の量子センサについての研究も開始した。ダイヤモンド中の量子センサと比べた利点はいくつか存在するが、センサの生成位置制御とその把握における利点をさらに強化できる使用法について提案して実験した。本成果は論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は、メゾスコピック領域の現象である磁区や磁気渦に対して、ダイヤモンド量子センサによる局所磁場の精密観測を通じて、量子効果や多体効果とその空間的揺らぎを定量的に議論し、その構造を明らかにすることである。初年度である本年度は、①磁気光学カー効果との同時測定技術の確立、②強磁性体による原理実証、③機械学習の使用による測定確度の向上、の3つを達成目標としていたが、これら3つをすべて達成した。加えて、翌年度以降の計画や、計画外ではあるが研究課題の達成に有用である技術についての研究も進展した。よって、当初の計画以上に進展していると評価する。 翌年度以降の計画として、④低磁場での測定確度向上、⑤反強磁性体磁区の測定の2つに着手している。④については一定の結果を取得し、論文を投稿中である。⑤についても興味深い結果を取得しており、国内外の研究者と議論をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
二年目となる本年度は、初年度に取得した磁場分布データの解析手法の開発を行いつつ、微小磁性体などのメゾスコピックスケールで加工されたものへ測定対象を拡張する。 初年度の測定により多くの定量的なデータが得られた。このようなデータについては、扱われた例があまり多くないため、その解析手法や方針も未だ確立していない。この開発を行い、明らかにできる事象や物理量を検討する。 初年度での測定からはまた、量子センサの適用にあたって、測定対象の微細加工が効果的な場合があることが明らかとなった。本年度はメゾスコピックスケールに加工したものを測定対象として主に取り扱う。 最終年度に計画していた低温での測定については、国外研究機関への視察や同分野の研究者との議論により、本手法では目標温度に到達しない可能性が高いことが判明した。よって、目標温度より高い温度でも測定可能な他の量子効果の測定を検討する。
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