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2023 年度 実施状況報告書

新機構に基づく世界最小のスキルミオンを伴う物質の開拓とダイナミクスの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ1061
配分区分基金
研究機関東京大学

研究代表者

吉持 遥人  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワードスキルミオン / 物質探索
研究実績の概要

本年度の研究業務では、近年提唱された新しいトポロジカル磁気構造の形成機構である、遍歴電子が媒介する相互作用に基づく機構に着目した。特に、前年度の研究業務で発見した極小サイズの多彩なトポロジカル磁気構造における外場制御を試みた。
1点目に、前年度の研究期間で発見した正方晶物質GdRu2Ge2における研究成果を論文としてまとめ、自身を筆頭著者として国際誌Nature Physicsにて発表した。本論文では、中性子散乱実験及び共鳴X線散乱実験に基づく詳細な磁気構造解析によって、本物質では楕円形スキルミオンやメロン-アンチメロン対、円形スキルミオンを含む直径2.7 nmのナノサイズの多彩なトポロジカル磁気粒子が実現していることを発見した。その上、遍歴電子が媒介する相互作用に基づく理論計算によって、これらの多彩なトポロジカル磁気粒子の形成機構を突き止めた。本成果は極小サイズのスキルミオンを実現するための新しい物質開拓指針を打ちたてる重要な成果であると考えている。
2点目に、上記で発見したGdRu2Ge2を対象として磁気相図の磁場角度依存性を測定したところ、面内磁場に対するメロンアンチメロン対の安定性が非常にロバストであることを発見した。本結果は、理論計算によっても精度良く再現されており、弱い面内磁場によって極小サイズのスキルミオンとメロン-アンチメロン対の間を自在に制御できることを明らかにした。
3点目に、空間反転対称な新規物質を対象として、トポロジカル磁気構造の探索を行った。磁化・電気輸送測定の結果、トポロジカルホール効果が発現していることを明らかにした。本物質に対して中性子散乱実験を行ったところ、トポロジカルホール効果に対応する領域で、複数方向のらせんの重ね合わせであるmulti-Q磁気構造が発現していることが明らかとなった。今後共鳴X線散乱実験によって磁気構造の同定を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究によって、正方晶物質GdRu2Ge2において楕円形スキルミオンやメロン-アンチメロン対、円形スキルミオンを含む直径2.7 nmのナノサイズの多彩なトポロジカル磁気粒子が実現していることを発見した。本成果は極小サイズのスキルミオンを実現するための新しい物質開拓指針を打ちたてる画期的な成果であると考えており、今後の更なる磁気スキルミオン物質の探索に大いに寄与すると期待される。
さらに本物質を元に、極小サイズのスキルミオンとメロン-アンチメロン対の間を自在に制御できることを明らかにしている。本研究は、多彩なトポロジカル磁気構造の情報担体としてのポテンシャルを解明する重要な成果であると考えられる。

今後の研究の推進方策

本年度の研究では、上述したような正方晶物質における多彩なトポロジカル構造の制御に加え、新たなトポロジカル磁気構造の候補物質を発見している。今後は中性子散乱実験や共鳴X線散乱実験等によって、詳細な磁気構造の同定を進めるほか、理論家との共同研究によって、微視的な起源の解明と物質設計指針の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

購入した物品の費用において、今年度44円分の残金が生じた。
翌年度においては、国内外の学会参加費及び物質合成の原料、光学備品の購入に支出予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] Deutsches Elektronen-Synchrotron DESY/University of Hamburg(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Deutsches Elektronen-Synchrotron DESY/University of Hamburg
  • [国際共同研究] Paul Scherrer Institute/Ecole Polytechnique Federale de Lausanne(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      Paul Scherrer Institute/Ecole Polytechnique Federale de Lausanne
  • [雑誌論文] Multistep topological transitions among meron and skyrmion crystals in a centrosymmetric magnet2024

    • 著者名/発表者名
      Yoshimochi H.、Takagi R.、Ju J.、Khanh N. D.、Saito H.、Sagayama H.、Nakao H.、Itoh S.、Tokura Y.、Arima T.、Hayami S.、Nakajima T.、Seki S.
    • 雑誌名

      Nature Physics

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41567-024-02445-9

    • 査読あり
  • [学会発表] Multi-step topological phase transitions among meron and skyrmion crystals in a centrosymmetric magnet2024

    • 著者名/発表者名
      H. Yoshimochi、R. Takagi、J. Ju、Nguyen D. Khanh、H. Saito、H. Sagayama、H. Nakao、S. Itoh、Y. Tokura、T. Arima、S. Hayami、T. Nakajima、S. Seki
    • 学会等名
      International Symposium in Quantum Electronics
    • 国際学会
  • [学会発表] Multi-step topological phase transitions among meron and skyrmion crystals in a centrosymmetric magnet2024

    • 著者名/発表者名
      H. Yoshimochi、R. Takagi、J. Ju、Nguyen D. Khanh、H. Saito、H. Sagayama、H. Nakao、S. Itoh、Y. Tokura、T. Arima、S. Hayami、T. Nakajima、S. Seki
    • 学会等名
      CEMS Symposium in Emergent Quantum Materials 2024
    • 国際学会
  • [学会発表] 空間反転対称な正方晶スキルミオン物質GdRu2Ge2における磁気相図の磁場角度依存性2023

    • 著者名/発表者名
      吉持遥人、高木里奈、Nguyen D. Khanh、速水賢、関真一郎
    • 学会等名
      日本物理学会2023年秋季大会
  • [学会発表] 空間反転対称な正方晶スキルミオンホストGdRu2(Si, Ge)2における新規相の発見と磁性の考察2023

    • 著者名/発表者名
      松山直史、野村肇宏、速水賢、加藤康之、吉持遥人、Nguyen D. Khanh、高木里奈、十倉好紀、関真一郎、小濱芳允
    • 学会等名
      日本物理学会2023年秋季大会

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公開日: 2024-12-25  

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