近年ファジーダークマターが、従来の冷たいダークマターに代わるダークマターモデルとして注目されている。ファジーダークマターは質量が非常に小さい仮想的なスカラー粒子で、量子力学的効果が宇宙論スケールで現れるという特徴を持っている。その結果、ファジーダークマターハロー内にはソリトンコアや粒状構造といった、ファジーダークマターモデルに特有な構造が存在することが分かっている。しかし、ファジーダークマターハローの構造を特徴づけるコア・ハロー質量関係に関する統一的な理解はなされていない。特に、コア・ハロー質量関係の分散や重いハロー質量領域における理解が不十分となっている。 従って本研究では、ファジーダークマターハローのコア・ハロー質量関係の準解析的モデルの構築に努め、上記の問題の解決を行なった。具体的には、与えられたハロー質量に対し、緩和時間条件によって質量再分配が起きるものと仮定し、コア質量を導出した。その結果、既存のシミュレーションをよく再現できることが分かり、また分散の由来はハローの質量集中度の分散由来に落とし込めることが分かった。重いハロー質量領域での振る舞いも決定することができた。 現時点では、我々のモデルはファジーダークマターのみを考えているが、今後はこの結果を踏まえてバリオンを入れた場合のコア・ハロー質量関係を計算していく予定である。これが完成した後には、実際の宇宙の観測データ(例えば銀河の回転曲線のデータ)と比較することが可能になり、よりファジーダークマター質量により厳しい制限がかけられることが期待される。
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