本研究は宇宙を満たす無衝突プラズマの新しいモデル化に取り組むことを目標としている。天体現象などのマクロなスケールと比べ、その背景にあるプラズマ中の波などの空間スケールはとても小さい。しかし、その小さなスケールの現象が大きなスケールにも重大な影響を与えることが、観測、シミュレーション、実験などで分かっている。 マクロスケールの記述には主に流体モデルが用いられるが、既存の流体モデルはミクロな効果をほぼ完全に無視してしまうため、近似的にミクロな効果を取り入れた新しいモデルが必要である。これまでの研究で、理想化された強い背景磁場中に適用できるモデルは完成している。一方で宇宙空間物理で重要な衝撃波や磁気リコネクションなどの、複雑な空間構造や中程度の磁場がある系でも適用可能なモデルはまだ未完成である。 本年度は、質量の大きなイオンにはほとんど影響がないが、質量の小さな電子には影響を及ぼす程度の背景磁場が存在する代表的な系である超新星残骸衝撃波での物理を調べた。理論およびスーパーコンピュータ「富岳」を用いた大規模数値シミュレーションで、このような系での磁場増幅を解明した。このようなミクロな物理は望遠鏡による観測が不可能なため、理論やシミュレーションと相補的な役割を果たす手法として、レーザー実験の検討も行い、実験室パラメタでの数値シミュレーションなども行った。 新しい流体モデルに関しては、スパースモデリングなどの手法の検討も行っている。
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