研究課題/領域番号 |
22J21462
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 悠一郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 中性子回折 / 高温高圧実験 / 水素化 |
研究実績の概要 |
水素は高圧環境下で多く鉄に溶け込むこと・親鉄性が高いことなどからも、地球核の主要な軽元素として有力な候補である。鉄は水素化することで様々な物性が変化する。鉄の水素化反応は高温高圧条件下での中性子回折によって明らかにされてきた。しかし、それらは単純な鉄ー水素二成分系での実験に限られており、実際の地球核に含まれると予想されている他の成分の影響は未解明である。 そこで、古くから軽元素の候補として有力なケイ素を含んだ三元系での高温高圧下中性子回折実験をおこなった。ここでは、地球核で純鉄の有力な安定構造であるhcp構造に着目した。本研究で用いた鉄合金はケイ素を5%含んだもので常圧環境下で純鉄同様bcc構造を持つ。そこで、大容量高圧発生装置をもちいて、室温で~15-17 GPaまで圧しこんでbcc構造からhcp構造に相転移させた。のちに昇温することで予め入れておいた水素供給源を分解させて鉄合金を水素化させた。また、放射光施設を用いたX線回折実験を相補的におこなった。こちらは、水素を含まない系・水素を含んだ系で幅広い圧力で実験をおこなった。これらの結果を相補的に考察することで、ケイ素を含んだ鉄合金の水素化挙動の理解の促進を目指した。 これらの実験の結果から少量のSiが鉄の水素化、特に水素化による体積膨張の効果に大きな影響を与える可能性が示唆された。以上の予察的結果を複数の国内学会のほかSPring-8シンポジウムにおける研究紹介並びに現状報告、オンラインではあったものの2国間のセミナーでの発表など盛んに発表をおこなうことができた。また、和文誌に第二著者として総説原稿を執筆したほか、筆頭著者として解説記事の寄稿をおこない、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、半期のJ-PARCの中性子回折実験に加えて、SPring-8 大学院生提案型課題(長期型)に採択された。そのため、滞りなく中性子回折と放射光X線回折実験の相補利用を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ケイ素が鉄の水素化与える影響に関する実験的結果をまとめて論文を執筆中である。一方で、現実の地球・地球型惑星の金属核を考えるにおいて、他の軽元素の存在が鉄の水素化にどのような影響を及ぼすかは重要な課題である。そのため、水素誘起体積膨張への不純物効果を理論計算と合わせて考察する必要がある。これにより、ケイ素が不純物として特異なのか?あるいは一般化できるのか?地球核のような高圧環境での挙動はどうなるのか?という問いへの答えを探りたい。また、水素・ケイ素は地球核のみならず、地球全体で考えたときにも非常に重要な元素でもある。核のみならずマントルの水素量の理解を深めることも必要である。
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