研究課題/領域番号 |
22KJ1067
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡野 遼 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 統計学 / 分布間距離 / 最適輸送問題 / 回帰 / 信頼解析 / クラスタリング |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に得られた研究成果をもとに、以下の3つの研究を行なった。 (1)前年度の研究によって知見を深めた、ワッサースタイン距離と呼ばれる確率分布間の距離尺度に基づいて、多変量ガウス分布間の回帰モデルを提案した。具体的には、ワッサースタイン距離が持つ等長性と呼ばれる性質を詳細に検討し、それを用いた分布の変換法を構成することで、ナイーブな回帰方法よりもより予測精度の高い分布間の回帰法を提案した。この成果は論文としてまとめてプレプリントして公開し、現在国際学術誌に投稿中である。また、いくつかの国内学会でその成果を報告した。 (2)前年度の研究によって知見を深めた、最適輸送写像と呼ばれる関数に対して、データから一様信頼バンドを構成する方法を提案した。最適輸送写像は最適輸送問題において基本的な関数であるが、それが持つ微分可能性等を詳細に検討することで、それを不確実性評価を伴ってデータから推定できるようになった。この成果は論文としてまとめ、国際学術誌Electronic Journal of Statisticsに採択された。 (3)前年度の研究によって知見を深めた、ワッサースタイン距離と呼ばれる確率分布間の距離尺度に基づいて、確率分布のクラスタリング手法を提案した。関数データに対して提案されていたk-中心法と呼ばれるクラスタリング法を、確率分布の特徴に合うよう修正することで、既存手法よりも大幅に精度の良い手法を提案できた。この成果は国内のいくつかの学会で発表し、現在論文としてまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた研究は、ワッサースタイン距離と呼ばれる確率分布間の違いを測る距離尺度に対して、分布の低次元射影を用いた改良を施すことで、大規模データへの適用を可能とすることであった。しかし、この研究内容は既に前年度および今年度の研究において既に一定の解決がなされており、現在はそれらの成果をもとに、内容のさらなる深化や関連する研究課題の解決に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた研究課題は解決することができたため、今後はそこで得られた成果・知見をもとに、関連する研究課題に取り組む予定である。特に、最適輸送理論を因果推論の問題に応用する試みが近年注目を集めており、申請者はこれまでの成果をそのような問題に応用することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた国際学会への参加が都合が合わず実現しなかったため、そのために計上していた参加費・旅費が使用されず、次年度使用額が生じた。次年度は国際学会への参加を行い、それに伴う参加費・旅費として助成金を使用する予定である。
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