研究課題
植物病原体は宿主細胞に「病原性因子」と呼ばれる様々なタンパク質を分泌し、宿主の細胞機能に影響を与え、自身の感染に有利な環境を作り出す。従って、病原性因子の機能解明は、病原体の感染戦略を理解し防除策を構築するために重要である。通常、解析対象因子の欠損変異体を作出することで、その機能を解析するが、植物病原細菌ファイトプラズマは純粋培養系が確立されておらず、変異体の作出ができないため、通常の方法による解析はできない。本研究では欠損変異体の作出とは異なる方法で、病原性因子の有無を制御する方法を確立し、ファイトプラズマの病原性因子の機能の全容解明を目的とする。本年度は、病原性因子の有無を制御するためにユビキチン・プロテアソーム系を利用した選択的タンパク質分解を実施予定で、GFP(YFP)、あるいはGFP(YFP)融合タンパク質のユビキチン・プロテアソーム系による分解を誘導するタンパク質(NSlmb-vhhGFP4)を用いるdegradFPシステムを改変する計画であった。まず、本システムがベンサミアナタバコ葉を用いた一過的発現系で機能するか検証するため、GFPあるいはYFPを融合した任意のタンパク質を標的タンパク質として、NSlmb-vhhGFP4と共発現させた。その結果、標的タンパク質の蓄積量は顕著には減少しなかった。このことから、本手法に基づいた方法だけでは、基質によっては分解効率が悪く、汎用性が低い可能性があり、解析対象の病原性因子には適用できない可能性が考えられた。従って、現在は、ユビキチン・プロテアソーム系とは異なるタンパク質分解機構であるオートファジーを利用した方法も検討しており、次年度も引き続き検証予定である。一方、複数のファイトプラズマのゲノムから共通して予測され、重要な機能を有していると推測される分泌タンパク質を見出し、植物体で発現させた時の影響を解析中である。
3: やや遅れている
本年度の研究実績の概要に記載した通り、当初計画していたdegradFPシステムがベンサミアナタバコの一過的発現系において汎用性が低い可能性が考えられ、他の方法も検討する必要が出てきたため。
次年度は、検討中の選択的タンパク質分解方法を確立し、ファイトプラズマの病原性因子の有無の制御を可能にする予定である。その方法を用いて、ファイトプラズマ感染における病原性因子の役割の全容を解明していく予定である。
次年度に新たな実験系を確立する必要が生じ、高額な消耗品類の購入を予定しているため。当該研究費は、実験のための消耗品に充てる予定であり、高額な機器の購入予定は無い。
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Molecular Plant Pathology
巻: 25 ページ: e13410
10.1111/mpp.13410