研究課題/領域番号 |
22KJ1083
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 拓海 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 植物ウイルス / 植物保護 / 抵抗性遺伝子 |
研究実績の概要 |
抵抗性品種の利用は植物ウイルス病の重要な防除手段の一つである。しかし、既存ウイルスの変異や新種ウイルスの出現によりこれらの抵抗性は打破される可能性がある。一方、抵抗性品種の作出は長期の育種段階を経る必要があり、変異ウイルスや新種ウイルスに対する迅速な対応は困難である。そこで本研究では、抵抗性遺伝子JAX1をモデルとした新規抵抗性遺伝子の創出システムを開発することで迅速な新規抵抗性品種の作出を目標としている。 前年度までにJAX1が標的とするウイルスの複製酵素の標的ドメインを明らかにした。本年度は、JAX1の改変領域を限定するため、JAX1の機能領域を絞り込んだところ、ウイルスへの抵抗性にはjacalin-related lectinドメインが重要であることが明らかとなった。加えて、結合性の改変において大腸菌内での相互作用をもとに選抜を行うため、JAX1ならびに複製酵素の標的ドメインを大腸菌で発現可能なベクターにクローニングし、大腸菌で両タンパク質が発現可能かどうかを検証した。その結果、大腸菌においてはJAX1の発現は確認されたものの、標的ウイルスタンパク質の発現量は著しく低いことが明らかになった。 加えて、植物ウイルス病の防除においてはウイルス病の性状を理解し、新興ウイルスに対する診断・早期発見技術の開発が重要になる。そこで、栽培トマトにおいて広く用いられる既存の抵抗性を打破し、世界的に被害を与えているtomato mottle mosaic virusに対する高感度かつ特異的な診断技術を開発し、国際学術誌ならびに日本植物病理学会において発表した。さらに、国内で初めて発生が報告されたmirabilis crinkle mosaic virusが多年性草本植物であるヨウシュヤマゴボウに感染することで半永続的にウイルスの伝染源となる可能性を明らかにし、国際学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
JAX1の機能領域を特定し、大腸菌内における発現は確認したものの、ウイルス複製酵素の標的ドメインの発現量が低く、本年度予定していたウイルス複製酵素に対するJAX1の結合性の改変に至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス複製酵素の標的ドメインの発現が低い原因の特定を試みる。その上で、コドンの最適化などにより大腸菌における発現条件を検討する。発現条件を決定した後、結合性の改変試験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は大腸菌内でJAX1とウイルス複製酵素を発現させ、JAX1の結合性改変試験を実施する予定であったが、大腸菌内でのウイルス複製酵素の発現量が低かったため、結合性の改変試験に至らなかった。そのため、次年度は大腸菌におけるウイルス複製酵素の性状に基づいて発現条件を検討した上で結合性改変試験を実施することとし、未使用額はそのための試薬や機器の購入に充てることとしたい。
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