研究課題/領域番号 |
22J21773
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
特別研究員 |
輝元 泰文 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 西洋仏教 / 近代仏教 / 禅 / フランス / 食養運動 / マクロビオティック / 弟子丸泰仙 / 仏教青年会 |
研究実績の概要 |
本年度は、1967~1982年のフランスにおける弟子丸泰仙の活動とその思想的背景を明らかにするため、主に日本国内での資料の収集とその分析を行った。資料の調査は、弟子丸泰仙が関わりをもった食養運動・マクロビオティック運動に関係する資料の収集と、弟子丸の師である澤木興道に関係する資料収集を主な目的として、沼田勇記念室(静岡県)・桜沢如一資料室(東京都)・貞祥寺(長野県)・国会図書館・熊本大学五高記念館等で行った。また、弟子丸の遺族の所蔵する資料から、主に彼のフランス語の著作・ヨーロッパ禅協会の会報を収集できた。 これらの調査で得られた資料を分析して、まず、食養・マクロビオティック運動と禅の人脈・思想の連関について、その思想的系譜を近代日本の食養運動の起源にまでさかのぼって解明した。特に弟子丸のフランスでのマクロビオティックや神経生理学とのハイブリッドな活動については、「フランスにおける禅のハイブリッド化―弟子丸泰仙を中心に―」と題して2022年9月に日本宗教学会第81回学術大会で発表した。また、ディヴィッド・マクマハンの「仏教モダニズム」論の枠組みを再検討したケイシー・コリンズが提唱している「対近代主義的仏教」の概念をフランスの禅に適用しつつ、弟子丸の禅と食養運動・マクロビオティック運動の思想・世界観の交錯を1960・70年代のフランスの社会状況に位置づけた論文「近代と対峙する医と禅―日本・フランスにおける食養運動と禅の交錯―」を執筆し、『東京大学宗教学年報』第40号に投稿した。 さらに、弟子丸の師であり西洋に広がる禅のキーパーソンである澤木興道については、大正期から昭和戦前期にわたる第五高等学校仏教青年会での活動記録を調査した。これにより、学生たちとの交流の中で澤木が禅の修養の普及に果たした役割の一端を解明することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
不測の事態が発生したため、研究の進展に遅滞を生ぜざるを得なかった。資料の調査と収集は当初の予定よりも遅れつつも、翌年度へ繰越したものも含めて、令和4年度に予定した調査を概ね完了することができた。しかしながら、資料の整理と分析にはさらに時間を要したため、禅と食養運動・マクロビオティック運動の関係についての論文の執筆・投稿は予定よりもかなり遅れることとなった。一定の成果を残せたともいえるが、当初の予定からの遅れは否めないため進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
弟子丸泰仙関係の資料だけでなく、澤木興道関係の資料の収集と調査も進んだので、澤木と仏教青年会の学生たちとの交流について、日本近代仏教史、修養、宗教教育、仏教青年会の研究に位置づけて論じることが必要である。これについては学会発表と論文投稿を行う。また、弟子丸泰仙関係の資料については、資料整理と分析を進め、基礎的な年譜の作成と資料の目録化を行う。また、澤木から弟子丸に至り、フランスで受容されていく対近代主義的な禅の思想的系譜を解明していくとともに、フランスでの心理学・精神分析と禅の関わり、フランスの1960年代以降のカトリックの動向との関係についても、さらに資料を精査していくことが必要である。
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