研究課題/領域番号 |
22KJ1092
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
六本木 雅生 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカル超伝導 / カイラル超伝導 / 時間反転対称性の破れ / マイクロ波 / 円偏波マイクロ波 / 空洞共振器 / 鉄系超伝導体 / 測定手法 |
研究実績の概要 |
本研究は、トポロジカル超伝導体の一つである時間反転対称性の破れたカイラル超伝導状態の基礎的な理解を進めるため、一軸歪みとMHz帯の共振器を用いた磁場侵入長測定を組み合わせた測定と円偏波マイクロ波空洞共振器を用いた分光測定の開発を行い、カイラル超伝導の検証を行うことが目的であり、主な内容は(1)一軸歪み下磁場侵入長測定装置の開発と測定,(2)円偏波マイクロ波空洞共振器の開発と時間反転対称性の破れの検出である。2023年度は、(2)の円偏波マイクロ波共振器の開発を中心に取り組んだ。前年度開発した共振器を改良し、高感度化に取り組んだ。特に以前の銅製の共振器に改良を加え、誘電体共振器を用いることで、大幅に感度が改善され、かつ磁場中でもその感度を維持できる円偏波マイクロ波共振器の開発に成功した。そして、開発した共振器を用いて、金属や超伝導体のような高い伝導度を有する物質において円偏波マイクロ波共振器モードに対する応答からマイクロ波領域でのホール抵抗を求める新しい測定手法の原理を考案し、実際に微小金属単結晶Bi試料を用いてテスト測定を行い、その有効性を確認することに成功した。これらの結果は論文にまとめ、現在、Review of scientfic instruments誌に投稿中である。今後は開発した方法を希釈冷凍機温度で実装し、カイラル超伝導の検証に取り組む予定である。 また、上記の内容とは別の研究実績として、昨年度以前に行った、ミュオンスピン回転緩和法を用いた鉄系超伝導体Fe(Se,S)の時間反転対称性の破れに関する研究やウラン系化合物UTe2におけるカイラル超伝導の検証に関する論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度まで開発を行っていた円偏波マイクロ波空洞共振器を改良し、高感度化に成功した。また、円偏波マイクロ波共振器を用いて高伝導度物質におけるマイクロ波ホール効果を測定する方法を確立した。 現在、この方法を希釈冷凍機温度まで拡張するための設計・開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した円偏波マイクロ波共振器およびマイクロ波ホール効果測定方法をカイラル超伝導候補物質に適用する。 そのため、まず初めに、円偏波マイクロ波共振器を希釈冷凍機に搭載する。具体的には、新しい共振器の設計、希釈冷凍機中のマイクロ波測定用インフラの整備および確立、共振モードの評価、実際に試料を用いたテスト測定等を行う予定である。 希釈冷凍機温度での測定環境及び方法が整い次第、ウラン系化合物URu2Si2やUTe2、またSr2RuO4などのカイラル超伝導候補物質での測定を行い、カイラル超伝導状態における時間反転対称性の破れに起因した異常ホール効果の測定を行う。 また、希釈冷凍機温度での測定系構築と並行して、ヘリウム4温度にて、磁束ホール効果測定やトポロジカル物質におけるマイクロ波帯での異常ホール効果の測定なども行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
極低温(希釈冷凍機)用のマイクロ波コンポーネントを購入する予定であったが、本年度は希釈冷凍機温度での測定系の構築まで至らなかったため、使用しなかった。 希釈冷凍機温度での測定系の構築は次年度に引き続き行う予定であるため、それらに必要な物品購入費として使用する予定である。
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