研究実績の概要 |
西部北太平洋から分離した海洋細菌Nonlabens marinus S1-08Tを対象とし、S1-08T株の持つ3種類のロドプシン(以下:NM-R1, 2, 3)のカロテノイド色素との結合能について調べた。大腸菌を用いた異種発現系を適用してロドプシンをHisタグにより精製し、S1-08T株の細胞懸濁液から抽出したカロテノイド色素を添加した。その後、再度精製し、吸収スペクトルを測定した。その結果、これらのロドプシンが全て、S1-08T株由来のカロテノイド色素と結合することを見出した。また、NM-R1, 3を対象にヒドロキシルアミンを用いてブリーチした結果、この2つのロドプシンは結合したカロテノイド色素と相互作用することを見出した。 これまでに発見された、カロテノイド色素も結合できるロドプシンは水素イオンを輸送するロドプシンのみである。NM-R1は水素イオン輸送型だが、NM-R3は塩化物イオン輸送型であるため、NM-R3と結合したカロテノイド色素は未知の相互作用をしている可能性がある。 次に、集光アンテナを塩化物イオン輸送型ロドプシンを備えるが多くの海洋細菌に共通する仕組みか否かを調べた。データベースより海洋細菌のPRのアミノ酸配列を取得し、系統樹を作成すると、S1-08株を含むBacteroidetes門、および海洋表層の優占種であるProteobacteria門のロドプシンは共通して集光アンテナを持つ上で必要なアミノ酸残基を保存することを見出した。これらの結果は、集光アンテナを塩化物イオン輸送型ロドプシンが幅広い海洋細菌に共通する仕組みであることを意味する。
|