研究課題/領域番号 |
22J22393
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 多実子 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | ヒストン / 触媒 / がん / エピゲノム / クロマチン |
研究実績の概要 |
エピゲノムはクロマチン結合タンパク質の動的な挙動により制御されている。中でも、クロマチンの主要な構成タンパク質であるヒストンのacidic patch領域は、多様なクロマチン結合タンパク質の足場であり、様々ながんにおいて突然変異が確認されるhotspotとしても知られている。しかしながら、生細胞内環境でacidic patch領域に結合するタンパク質(APB)を網羅的に解析する手法はこれまで存在しない。 本計画ではAPBの網羅的検出のため、ヒストンアシル化化学触媒システムを用いることとした。化学触媒はリガンドによってヒストン上にリクルートされ、近傍のリジン残基を位置選択的にアシル化する。本計画では近傍タンパク質と光架橋を形成するプローブを含むアシル基を、化学触媒によってヒストンに導入するという戦略により、生細胞内でのAPB網羅的解析を目指した。 本年度は、①アシル化触媒システムの改良および②ヒストンに導入したプローブとAPBの間での光架橋形成の初期検討を行った。 ①の触媒システムの改良については、化学触媒をヒストン上にリクルートするリガンドの設計を改変し、ヒストンへの結合能を向上させることで、より低い濃度でヒストンにアシル化を導入可能な化学触媒の開発に成功した。②に関しては、ヒストンに導入したプローブとacidic patch領域に結合するモデルタンパク質の間での光架橋形成についてin vitroでの初期検討を行い、細胞内での光架橋形成に向けた系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属研究室の従来の触媒システムでは、生細胞内ヒストンに対するアシル化効率が不十分であり、APBの網羅的同定に向けた大きな障壁であった。現在までに、より低い濃度でヒストンにアシル化を導入可能な化学触媒の開発を行ったことにより、APB解析用のプローブの効率的な導入が可能になると期待される。昨年度行った触媒システムの改良および、触媒によりヒストンに導入したプローブと相互作用タンパク質との間での光架橋形成の実験系の構築は、がん研究の新規研究戦略の確立に向けた大きな前進であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、改良した触媒システムを生細胞内で用いることで、APB解析用プローブの効率的なヒストン導入を行う予定である。さらに、これまでに構築した光架橋形成の系を、細胞内のプローブ導入に応用し、生細胞内でのAPB解析を行いたい。その後、多様な細胞種についてAPB解析を行うことで、がんの新規治療標的の発見を目指すことを目標とする。
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