研究課題/領域番号 |
22J23077
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平島 敬也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 銀河形成シミュレーション / 超新星フィードバック / 深層学習 |
研究実績の概要 |
銀河形成は、重力流体力学、放射冷却、星形成、超新星などが複雑に絡み合った現象であるため、N体・SPHなどの粒子系シミュレーションを用いて研究が盛んに行われている。スーパーコンピュータの発展(CPUコア数の増大など)に伴い、シミュレーションで用いる粒子数が増加し、質量分解能は向上してきた。本研究では、スーパーコンピューター「富岳」を用いて、個々の恒星まで再現された超高解像度銀河形成シミュレーションの実現を目指す。これにより、銀河系内の個々の恒星の運動や化学組成が明らかになるため、史上初のシミュレーションと観測の直接比較が可能になり、太陽に類似した星の誕生した環境、現在までの移動経路などの解明が期待される。 解像度の向上は、銀河進化に対してタイムスケールの短い現象(超新星爆発など)の再現を要請する。銀河回転のタイムスケールは約100万年であるのに対し、超新星爆発のタイムスケールは100年程度と非常に短い。そのため、超新星爆発の再現に必要な非常に短い時間刻みが、銀河全体の演算回数を数百倍以上に増加させる原因となる。また、CPUコア数1000個以上の並列計算では、演算に伴う処理(CPU間通信など)が著しく増大し、並列化効率が低下する。そのため、高並列度で演算回数・通信回数の多い計算の実行は困難である。 そこで、これらのタイムスケールが非常に短い、超新星爆発の再現に関わる粒子を深層学習で事前に推定し、それらを個別に計算することにより、CPU間通信のボトルネックを解消する手法を開発していく。さらに、そのモデルを用いることで、個々の恒星まで再現された超高解像度銀河形成シミュレーションの実現を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、個々の恒星を分解した銀河形成シミュレーションを実現するために、超新星爆発によりタイムスケールが非常に短くなる粒子を抽出する深層学習モデルを開発した。本来の計画では、本モデルの銀河形成シミュレーションASURA-FDPSの実装を行い、その後、富岳への最適化を行う予定であった。しかし、ASURA-FDPSの富岳への最適化が予定より時間を要したため、深層学習モデルの富岳への最適化を先に行なった。株式会社モルフォから提供された推論エンジンを富岳に最適化したことで、本モデルの推論に要する時間が19倍短縮した。また、本年度、開発した深層学習のモデルに関する論文をまとめ投稿したため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、開発した深層学習モデルを銀河形成シミュレーションASURA-FDPSに実装する。ASURA-FDPSが富岳上で動作可能になり次第、最適化も進めていく。さらに、並行して深層学習モデルの高度化も試みる。現在は、タイムスケールの短い粒子を独立させて計算するために深層学習を用いているが、将来の粒子の分布や物理量をエミュレートする手法の可能性を調査する。
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