研究課題
ミトコンドリアは、細胞内におけるエネルギー変換やアポトーシス制御などの重要な役割を果たす細胞内小器官(オルガネラ)であり、その機能は生体の恒常性維持に不可欠であるものの、その制御機構の全容の解明には至っていない。近年、ミトコンドリアは小胞体との間に物理的な接触場を作り、この接触場はミトコンドリアの機能制御に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。重要なことに最近、小胞体局在タンパク質PDZD8が哺乳細胞におけるミトコンドリアー小胞体接触場の責任タンパク質として報告されたものの、PDZD8による接触場形成の分子機構は未だ不明である。そこで本研究では、PDZD8によるミトコンドリアー小胞体接触場の形成機構の解明を行う。接触場形成機構の解明にあたり、まずPDZD8と結合するミトコンドリアタンパク質を同定することにした。当該年度は、まずPDZD8と直接結合するミトコンドリアタンパク質を同定するためのスクリーニング系を立ち上げ、その候補因子の探索とその検証を行った。一般的には過剰発現した目的タンパク質を用いたスクリーニングが行われることが多いが、過剰発現PDZD8のインタラクトームは内在PDZD8のインタラクトームを正確に反映しない可能性があることが示唆された。この問題を解決するために、本研究ではCRISPR/Cas9システムを用いたノックインを利用し、内在PDZD8に対するスクリーニング系を立ち上げることに成功した。このスクリーニング系を用いてインタラクトームを同定し、複数の有力な候補因子を同定した。次年度以降は、PDZD8とこれら候補因子によるミトコンドリアー小胞体接触場の形成機構とそのミトコンドリア機能制御における役割を解明する。
2: おおむね順調に進展している
PDZD8による小胞体ーミトコンドリア接触場形成機構の解明のために、PDZD8のインタラクトームを同定した。その際に、CRISPR/Cas9システムを用いてノックイン細胞を樹立することで、内在タンパク質に対するインタラクトームの同定に成功したため。
PDZD8とPDZD8結合因子による、小胞体ーミトコンドリア接触場形成機構の解明と、そのミトコンドリア機能制御に与える役割を解明する。
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