研究課題/領域番号 |
22J23532
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南條 愛華 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / 薬剤感受性予測 / がん / バイオマーカー / 酵素活性 / ケモインフォマティクス / バイオインフォマティクス / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、本年度は、(1)ハイコンテントイメージング手法による、がん細胞の酵素活性の測定、および(2)薬剤の記述子の探索を実施した。 (1)ハイコンテントイメージング手法による、がん細胞の酵素活性の測定 公益財団法人がん研究会がん化学療法センター分子薬理部で確立されているヒトがん細胞パネル(JFCR39)に含まれる複数種類の多様ながん細胞株に、当研究室で開発した蛍光プローブ群 (蛍光プローブライブラリー)を添加して、各細胞株における各プローブ由来の蛍光の上昇率を測定した。測定値から、がん細胞1細胞あたりの酵素活性(個々の蛍光プローブを代謝する活性)を算出し、蛍光プローブライブラリーへの「応答パターン」と定義した。測定装置はPerkinElmer社のOperetta CLSハイコンテント共焦点イメージングシステムを用い、試薬の添加や撮像の条件、画像解析のプロトコルの最適化を行った。得られた応答パターンのデータを解析し、ハイコンテントイメージングベースでがん細胞の蛍光プローブライブラリーへの応答パターンを測定する実験系の妥当性を評価した。 (2)薬剤の記述子の探索 抗がん剤の特徴を表現する記述子として、作用機序・臨床適応・構造・物理化学的特性を選択した。臨床現場(調剤薬局および大学病院)にて、多様な薬剤の作用機序・臨床適応の情報を実地で収集した。また、量子化学計算やケモインフォマティクスの手法を用いて、構造・物理化学的特性に関連する特徴量の抽出を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、がん細胞1細胞あたりの酵素活性(蛍光プローブを代謝する活性)を測定するために、ハイコンテントイメージングシステムを用いたが、実験結果が安定しないことが明らかになった。当初の想定以上に、視野内の細胞数のばらつきが大きいこと、蛍光プローブが代謝されて生じる蛍光物質HMRGの細胞外漏出の影響が大きいことが原因と考えられた。この問題を解決するために、測定装置を含めた実験系を当初の計画から部分的に変更する必要があると考えられるため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかになった測定上の問題点を解決するべく、実験系の改善を行う。具体的には、蛍光プローブが代謝されて生じる蛍光物質HMRGの細胞外漏出の影響を排除するために、プレートリーダー等の測定装置で、バルクの蛍光値を測定する。さらに、細胞数定量のアッセイを行い、細胞数で蛍光値を正規化することで、細胞数のばらつきの影響を低減し、がん細胞1細胞あたりの酵素活性(蛍光プローブを代謝する活性)を算出する。実験系の改善の後に、ヒトがん細胞パネル(JFCR39)での網羅的測定を行い、得られた酵素活性の情報と、これまでに抽出した薬剤の記述子から、薬剤感受性を機械学習によって予測するモデルを構築することを目指す。
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