研究課題/領域番号 |
22KJ1183
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 海 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ローラシア獣類 / 鼻構造 / 鼻甲介 |
研究実績の概要 |
23年度の研究では、真無盲腸類(モグラ類、トガリネズミ類)の外群に属する奇蹄類(ウマ)、偶蹄類(イノシシ)、食肉類(イエネコ)、鱗甲類(ミミセンザンコウ)、翼手類(ルーセットオオコウモリ)の鼻構造の硬組織と軟組織の発生を三次元形態学的に明らかにした。本研究には、国立科学博物館および鶴見大学に所蔵されている胎子、幼体、成体の標本が使用された。鼻構造の三次元化は、標本を造影剤で染色後、μCTスキャンを行い、ソフトウェアAmiraを用いて実施された。その結果、ローラシア獣類の共通祖先では、既に複数に分岐した巨大な上顎甲介を持っていたことが示され、篩骨甲介の数は奇蹄類で独立して増えたことが明らかになった。また、各篩骨甲介の分岐は、食肉類、奇蹄類、偶蹄類、鱗甲類の共通祖先で増加していたと考えられる。これらの結果は現在、国際誌への投稿を目指して執筆中である。さらに、鼻腔内の上皮構造を知るため、神経、嗅細胞、分泌細胞の分布を調査する新たな手法を用いた研究も進行中である。先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援を受け、透明化試薬を用いた免疫染色手法を試行し、細胞分布の3Dモデル作成技術の習得に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標本を造影剤で染色後、μCTスキャンして得たデータから鼻構造を三次元化し、文献調査で得た知見と照らし合わせた。その結果、ローラシア獣類の鼻構造、特に軟骨・骨組織のボディープランを解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
μCTスキャンでは観察できない鼻の上皮構造を構成する細胞(神経、嗅細胞、分泌細胞)の分布を観察するために、透明化試薬を用いた免疫染色手法を用いる。この観察により得られた細胞分布の情報から、鼻の上皮構造を3Dモデル化し、ローラシア獣類の鼻の上皮構造のボディープランを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
透明化試薬であるCUBIC IIを用いた実験を行った結果、組織が透明化しなかった。そのため、これまで用いた試薬(CUBIC II)ではない別の試薬に変更する必要があった。次年度使用額はCUBIC IIの購入を辞めたために生じたものであり、別試薬を購入するために用いる予定である。
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